
解体修理で5年ぶりに現れた姿
東京に生まれ育ち、画壇の中心的存在として活躍した画家・石井柏亭(はくてい)(1882~1958年)。1945年3月に松本市浅間温泉に疎開すると、その後もこの地にとどまり、制作活動の傍ら、信州美術の復興と発展にも尽力しました。
気に入ったモチーフは繰り返し描いたという柏亭。松本城もその一つでした。
50年5月に始まった松本城の解体修理は、さまざまな困難を乗り越えて55年10月に竣工(しゅんこう)します。本作は、その竣工直前の夏ごろの作品(下の写真は制作中の本人)。遠景には美ケ原高原の西端・王ケ鼻を望み、湧き上がる白い雲を背に、太陽に照らされる屋根と陰になり暗い城壁とがコントラストをなしています。5年ぶりにその威容を現した松本城への感動が、画面から伝わってくるようです。なお、柏亭の厚意により本作の絵葉書が制作され、工事関係者や協力者にも贈られました。
「石井柏亭展」では、他にも終戦直前の松本城や、外堀を描いた作品を展示中です。また、太鼓門では11月10日まで、昭和の大修理竣工70周年と太鼓門の耐震工事が今年度竣工することを記念するパネル展示を開催中です。この機会に、ぜひ併せてお楽しみください。(なかざわ・あき 松本市美術館学芸員)
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松本市美術館(中央4)で、松本ゆかりの画家・石井柏亭の回顧展が12月7日まで開かれています。同館学芸員の中澤聡(あき)さんが、展示中の作品から松本を描いた作品などを紹介していきます。毎週金曜日に掲載。同展については同館のウェブサイトに。
