【戦後80年 石井柏亭 えがくよろこび】 #4 『とり入れのあと』(1901年 松本市美術館蔵)

一家の大黒柱として働いた19歳

画家としての技量の高さだけでなく、美術史や最新の海外の美術動向にも詳しかった石井柏亭(1882~1958年)。かねてより、美術品は一般に広く公開すべきであるという考えのもと地方都市における美術館や博物館施設の必要性を説いていました。その理念を裏付けるかのように、松本に疎開した後は信州の美術館施設などにも深く関わるようになります。
1947年、県内初の公立美術館である諏訪美術館(現・諏訪市美術館)が開館し、柏亭は副館長を務めました。また、同館及び松本市立博物館に愛蔵していた作品を寄贈しています。柔らかな筆致で収穫後の田畑を描いた本作もその1点。若くして父を亡くし、一家の大黒柱として働きながら画作に励んでいた19歳頃の水彩画で、松本平に残る柏亭作品の中でも特に古いものです。本作を含む自作に加え、父であり画家の石井鼎湖(ていこ)、オシップ・ザッキンといった外国人作家らの作品計18点が松本市立博物館に寄贈され、現在は松本市美術館で所蔵しています。
石井柏亭展、また同時開催中の第3期コレクション展では柏亭が寄贈したそれら作品の一部を展示中です。ぜひ併せてお楽しみください。
(なかざわ・あき松本市美術館学芸員)

松本市美術館(中央4)で、松本ゆかりの画家・石井柏亭の回顧展が12月7日まで開かれています。同館学芸員の中澤聡(あき)さんが、展示中の作品から松本を描いた作品などを紹介していきます。毎週金曜日に掲載。同展については同館のウェブサイトに。

オシップ・ザッキン《二人》1922年 松本市美術館蔵