
「ちぎって、重ねて、自分色に」。マスキングテープ(マステ)の世界が、貼るだけの道具から「描く楽しさ」へ広がっていく。
大阪府から安曇野市へ、昨年移住したちぎり絵作家、田村美紀さん(37)が2月、著書「マスキングテープ イラスト&デコブック」(翔泳社・1800円)を出版した。これに合わせ、松本市浅間温泉1の紙もの雑貨店「手紙舎 文箱」で出版記念展を開催。16日まで原画やグッズが並び、マステの魅力を伝えている。
色とりどりの花柄、幾何学模様など、手頃な価格とかわいらしさから、集める人も多いだろう。それらを手でちぎり、貼り合わせて絵を描く。手軽で楽しいマステちぎり絵。「子どもと一緒に、あるいは新しい趣味として、創作の時間を楽しんでほしい」
透け感や色合い直接感じて
田村美紀さんが描くマステちぎり絵の題材は、ドーナツやフルーツ、花やチョウといった日々の暮らしの中で見つけた身近なものから、スケールの大きな夕焼けや草原の風景まで、幅広い。
制作は、下描きに合わせてマステを「ちぎる」ことから始まる。指先でラフにちぎることで生まれるガタガタとした断面が、モチーフの輪郭を優しくぼかし、作品にぬくもりが生まれる。
田村さんの新著「マスキングテープ イラスト&デコブック」は2作目の著書で、A5判、136ページ。マステを画材に見立て、手紙や贈り物のメッセージのワンポイントで、活用できそうな小さめの作品を中心に掲載している。ちぎり方の基本から応用まで、100種類以上の作例を示しながらポイントを解説。デコレーション術の紹介や下絵のダウンロード特典もあり、マステさえあれば誰でも気軽に制作を楽しめる内容になっている。
野ならではの作品制作に意欲
田村さんとマステの出合いは学生時代。京都の美術大学で水彩画を学んでいた。卒業制作に向けた素材研究を進める中で、ふと手にしたテープに魅了されたことが、活動の原点となった。「柄と無地を合わせたり、同じ色を重ねてグラデーションを出したりと、表現は無限大です」と話す。
最大の魅力は、和紙特有の「うっすらとした透け感」や「重ねることで生まれる濃淡」、そして和紙をちぎることで生まれる繊維の「温かな風合い」がある、と田村さん。はさみやのりを使わなくても、ちぎって貼れて、失敗しても貼り直せる手軽さがある。「絵を描くのが苦手な人でも、本格的な道具なしで始められる。無心になれる創作の時間が、新しい趣味を持つきっかけになるといい」と話す。
夫の仕事の都合で安曇野へ移住後、豊かな自然に刺激を受け、山や白鳥などをモチーフとした作品が増えた。「今後は長野県ならではの作品制作もしていきたい」と意欲を燃やしている。
松本市の「手紙舎 文箱」での出版記念展では、原画展示のほかポストカード、オリジナルマスキングテープ、巾着袋、信州を題材にしたメモ帳など、約30種類のグッズを販売。「マステならではの繊細な透け感や色合いを、直接感じてほしい」と呼びかけている。
午前10時~午後5時半。火曜定休。TEL0263・87・2716