色彩豊かな「こまマグネット」松本の斉川大さん施設で作り人気に

松本市の福祉就労施設「エルサポートパノラマ」(沢村1、村瀬元良施設長)に、左手だけで折り紙を畳み、小さなこまを作る利用者がいる。市内から通う斉川大さん(45)だ。
こまは加工液を塗って固め、冷蔵庫などに張るマグネットへと加工する。これが福祉バザーなどで「色彩豊かでかわいらしい」と人気を呼んでいる。
斉川さんは幼少期の交通事故がもとで右半身の自由を失った。その後、左半身の機能訓練に励み、左手だけでいろいろな作業ができるようになった。
失意の日もあったが、折り紙を通じ、自分が人のために役立つことを知って笑顔を取り戻した。今は施設の仲間に囲まれながら、「もっと多くの人に喜んでもらいたい」とマグネット作りに精を出している。

左手だけで折り紙 大きな笑顔が仲間も励ます

斉川大さんが松本市の「エルサポートパノラマ」で作っているマグネットは、大きさが2・7㌢四方と5㌢四方の2種類。それぞれ4㌢弱、8㌢弱の折り紙でこまを折り、裏に磁石を接着剤で貼る。加工液で全体を固めるとマグネットが出来上がる。
斉川さんの作業はこまを折るまでで、あとは施設スタッフに任せる。小さな紙を折るには根気と集中力が要るので、1日数個が精いっぱいだ。
絵を描くことが好きで、ピンクや緑など温かみのある色、穏やかな色を多く使う。理由は「人の気持ちが和むから」。最近は和柄で美しさも追求している。
快活な斉川さんだが、人生は過酷だった。4歳でトラックにはねられ、右半身の自由を失った。中学時代は家族と離れ、寄宿舎生活を送りながら身体機能の回復訓練に励んだ。養護学校高等部では就職を望み、スーパーへ職業体験に出たが、重いハンディに願いを打ち砕かれた。
1998年、身を寄せたのが「パノラマ」だった。障害や難病などで就職が難しい人たちに、軽作業の場とスキルを提供する施設。利用者は障害や体調に合わせて作業に従事し、報酬も得て社会参加と自立した生活を目指す。
現在は毎日約20人の障がい者が通い、菓子作りや回収されたペットボトルの分別、ゆうメール配達、近くの市中央図書館周辺の清掃などを行っている。
斉川さんは、藍染めのクッション作りなどをして手先を使う作業の面白さを知った。だが自分に自信を得たり、自分にしかできない世界を見つけたりするまでには至らなかった。
転機は近隣住民との交流会がもたらした。10年以上前、ある住民から折り紙のこま作りを教わった。指でつまんで回すこま。やってみると出来栄えが良く、「上手だ」と褒められた。
こまを同図書館で展示してもらった。すると子どもが大勢集まり、われ先にこま回しに興じた。「この手で人を喜ばせられる」。こま作りに熱中した。
一昨年秋、施設スタッフの一人が「こまをマグネットにしてみては。人気になるはず」と斉川さんに声をかけた。こうしてマグネットが生まれた。
市内各所での福祉バザーで出品した。どこでも「こんなかわいらしいマグネット、見たことない」「机のアクセサリーにもいい」と評判を呼び、予想以上に売れた。
斉川さんが大きな笑顔を浮かべた。「みんな、どんなふうに使ってくれているのかな」と想像しながら毎日こまを折るようになり、これまで約100個のマグネットを作った。
張り切る姿は利用者仲間も励ました。30代の女性は「いつも快活な斉川さんは人気者。元気をもらっています」と話す。
斉川さんは仲間やスタッフに「みんな優しい。私のことを理解してくれている」と感謝。「もっとすてきで、多くの人に使ってもらえるマグネットを作りたい」と目標を掲げる。
マグネットは1個200円。セロハン包装入り同250円。20日午前10時から同市白板地区公民館で開かれるマルシェでも販売する。エルサポートパノラマTEL0263・35・0811