
「遺影写真を撮りませんか」と言われたら、違和感や不快感を感じる人はいるだろう。一方、今自分に何かあったら「遺影に使える写真があるか」と心配になる人も多いはず。
松本市の増田春香さん(40)は、遺影写真専門の写真家だ。
コロナ禍をきっかけにカメラに興味を持ち、講座などで勉強して趣味から仕事に。子どもと家族のポートレート(肖像写真)などを中心に撮影する中、客からの「ついでに遺影も」の一言で、その大切さに気付いた。
同じ頃、父親の大病が分かり、亡くなる前に「いい遺影を撮ることができた」と、身をもって準備の必要性を実感。「遺影写真家」として本腰を入れ始めた。
遺影のマイナスイメージ払しょくが大きな目標。「遺影は家族への贈り物。その人らしさが出た写真を撮りたい」と力を込める。
「その人らしさが出た1枚を」
遺影専門の写真家、増田春香さんは、「笑顔の日」の2月5日、松本市浅間温泉1の浅間温泉手しごと館で「笑顔のイェイ写心撮影会」を開いた。
60~80代の9人が参加。撮影前に増田さんは「どんな写真にしたいか」を客と打ち合わせ。撮影が始まると、笑顔でコミュニケーションを取りながらカメラを向けた。その場の雰囲気は明るく、笑い声もあった。すっかりリラックスした客は、自然な表情で写真に納まった。
中條淑子さん(89、同市浅間温泉)は、夫が亡くなった時に遺影写真がなくて慌てた苦い経験がある。「元気なうちに自分で用意しておけば、家族に迷惑がかからない。満足できる写真を撮ってもらった」と笑顔を見せた。
秋山啓子さん(78、同市岡田伊深)は、数年前に99歳で亡くなった母が、すてきな遺影写真を撮ってあったため、自分もそれに倣った。60代の時にも撮影した秋山さんは「どんどん『更新』していけば長生きもできる」と笑った。
増田さんは、「女性は『きれいな自分を撮ってほしい』という思いが強いのでは。ここに来てくれた人たちは、遺影写真だけでなく、いろんなことに前向き」と話した。
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コロナ禍だった4年ほど前、リモートで受講できるさまざまな分野の講座が開設された。2人目の子どもを産んだ増田さんは、「わが子のかわいい写真を撮りたい」とカメラに興味を持ち、勉強開始。約1年後には、面白さにはまると同時に「中途半端にしたくない」と意識が変わった。子どもとその家族の写真を中心に撮影するプロとして活動を始めた。
SNSに作品を投稿するなどしてPR。昨年の七五三の時期には、2カ月で約40件の依頼があった。
そうした活動をしていたある時、客から依頼を受けた。「ついでに遺影も撮って」。「ニーズがある」とピンときた。
ほぼ同時に父の大病が発覚。自身が遺影を準備しなければならない立場となった。
昨年6月に亡くなった父の遺影は、病気が分かった後の家族旅行の際に撮影。「いい写真が取れた」と振り返る。しかし「遺影で困る人をなくしたい」という思いは募り、父が亡くなってから、「終活アドバイザー」の資格の勉強と共に、民間の「『イエイ!写心』アカデミー」の講座を受けた。今年から遺影専門の写真家として本格的に活動。同アカデミーの「イェイ!写真家Ⓡ」の資格も得た。
「亡くなった人を思い出すときに見るのが遺影写真。残された人たちにとって長い付き合いになる」と増田さん。「だからこそ、その人らしさが出た写真にしたいし、そうした写真を撮るのが魅力」と話した。
「シニアの日」の4月28日、松本市梓川倭の介護老人福祉施設サルビアで、シニア向けの撮影会を開く。問い合わせは増田さんTEL090・8326・4201