地域とのつながり築く場に 南木曽で古民家宿とカフェ営む田島知哉さん・真央さん夫妻

南木曽町読書で古民家宿とカフェの「雨中山道」を営む田島知哉さん(34)、真央さん(32)夫婦。自然豊かな場所で子育てをしたいと横浜市から移住。築150年の古民家を改装し、宿を開いてもうすぐ1年になる。四季折々の美しい景色で客をもてなす宿を通じて地域とのつながりを築き、活性化を目指している。
旧中山道の妻籠宿と馬籠宿の間にある「雨中山道」は、1日1組限定の1棟貸し宿。歴史と新しさを融合させた空間で、地域の木工作家の作品を展示するほか、併設のカフェ(木~土曜の午後1~4時)では、オリジナルブレンドコーヒーや町内の名産品「田立のお茶」、地元産ジュースなどを提供する。
東京の不動産会社でホテル部門の企画運営を担当していた知哉さんと、カフェの専門学校で学んだ真央さんは共に関東出身。自然が好きでキャンプも趣味だった。
2022年に結婚し、長女の爽葉ちゃん(2)の誕生を機に移住を計画。各地を探し、山や谷が近く原風景が残る南木曽町を気に入り、移住した。
知哉さんは24年度から同町の地域おこし協力隊員になり、空き家を活用した宿やカフェでの町のにぎわいづくりを目指した。
知り合いが誰もいない場所での新たなスタート。移住、転職、起業、初めての子育て―と、大きな節目が重なり、「とても不安だった」。
また、全てをゼロから築いていくことの難しさも実感したが、「初めてのことに挑戦する経験が、自分の糧になっていると信じている」と知哉さんは前向きに捉えている。
住民との信頼関係を築く中で、古民家を購入できることに。自己資金と借入金で改装し、昨年5月に「雨中山道」を開業した。
宿の名前は「雨の日をハレに」がコンセプト。雨の日や少し気分が落ち込んだ日でも、この場所に来ることで心が少し晴れるような、温かい時間を過ごしてほしい―という願いを込めた。
ハイシーズンはほぼ満室で、客のほとんどが欧米人。「思い出深い滞在になった」などと言われるのがやりがいの一つで、泊まるだけの場所でなく、地域とのつながりやコミュニケーションが生まれる場所にするのが目標という。
今年は協力隊員になって3年目となる知哉さん。今秋には木曽地域を巡るアート工芸イベントを企画中だ。
また宿は、新たに「古民家ウエディング」にも対応し、カフェでは今後、毎月2回、「子どもデー」を設け、子育て世代が家族で訪れ、くつろげる場所にする。地元アーティストの音楽ライブも開く。
昨年、次女の朝咲ちゃん(8カ月)が誕生。「泊まりに来てくれた人を家族皆で迎えるアットホームな宿にしたい」と真央さんはほほ笑む。
「朝起きると美しい山が見え、地域の皆さんも優しい。移住生活にとても満足しています」と夫婦は口をそろえる。町に張った根を、家族も地域も未来につながるきっかけにするつもりだ。