[創商見聞] No.117 未来創造塾 ネオ寺子屋

塾ってすごいと思ってもらいたい

【みやさか・もとふみ】49歳。信州大大学院修了(法務博士)。2024年3月創業。   

未来創造塾 ネオ寺子屋

塩尻市大門10—3コーポラス八千代テナント2階

0263-50-8082

―スッと出てきた名前 

 塾で教えるようになって20年近くになりますが、何度か「先生って自分で塾をやらないの?」と言われました。「やろうかな」「どんな名前でやるの?」「俺がやるならネオ寺子屋だな」と、何げない会話のやりとりから生まれたネーミングでした。  
 ただ、自分の中では割とスッと出てきた名前でした。寺子屋のように手頃で、みんなが通いやすい雰囲気で、経済的に余裕を持って通える塾ができたらいいかも、と考え続けていました。
 岡谷市で生まれ育ち、新潟大法学部を卒業後、信州大大学院へ進みました。学生時代は、バーテンダーなどのアルバイトもしたのですが、塾の先生が一番熱量を持って取り組めました。
 自分が進学するわけでもないのに、塾生が目標に向かって努力し実現していく過程を疑似体験させてもらう感覚が、すごく好きでした。大学院まで行くぐらい法律の勉強も好きだったのですが、自分より利他というか、子どもたちの成長過程に寄り添っていく方が好きで「これが俺の仕事だ」と感じ、塾の講師になりました。同じ塾で16年ほどお世話になりました。
 先ほど話した通り創業したい気持ちはあったのですが、強く思ってはいませんでした。ただ、年々少子化が進んでいるけれど、利益ばかりを優先しがちな業界の現状を改善できたら―と感じるようになりました。
 寺子屋的な学習スペースの実現は、自分の原点回帰であり、塾の再定義にもなると思うので、意欲が高まりました。2024年3月に創業しました。
―子屋構え
 金融機関に相談し、創業計画書を作成しました。建物の物件はインターネットなどで検索しました。   並行して塩尻商工会議所にも相談に行き、「商業地空き店舗活用事業(空き店舗改修費補助・家賃補助)」が適用できると紹介され、申請しました。創業計画は、全てが同時進行で大変だったのですが、大きな問題もなく進められました。
 知人から、今使っている物件を紹介してもらいました。元々喫茶やスナックなど飲食店だった建物で、最後はカレー屋さんだったらしくカウンターがありました。普通の塾の先生だったら選ばない物件だと思うのですが、カウンターを見た瞬間に「面白い」と思いました。バーテンダーの経験があったからかもしれません。酒の代わりにホワイトボードを置いて、対面で問答するスタイルに可能性があると感じました。カウンターを生かした形で〝寺子屋〟を作ろうと思い、進めました。 和風にするため、窓の内側に障子を入れ、天井はネイビー、本棚は朱色にして和と洋を融合させ、ちょっと〝江戸感〟のある勉強空間を作ろうと考えました。
 カウンターの後ろには自習席もあります。カウンターで対面しながら問答していても、自習している子どもに話しかけて同じ問題を解かせることもでき、よい距離感になっています。


―塾は成績が上がる場所
 創業申請から3カ月後の6月から、ネオ寺子屋を始めました。主な指導科目は、高校は英語と現代文、中学は英語・数学・国語です。日常の勉強から大学・高校受験、定期テスト対策まで対応します。ニーズに合った個々の通塾計画もあるので、併塾も認めています。
 わずかな生徒数からスタートしましたが、〝寺子屋〟なので入会金がなく、授業料も赤字にならない程度に設定しました。間もなく3年目に入ります。今は遠くから通ってくれる塾生もいます。何より、塾生たちの成績向上が、経営方針の正しさを証明していると感じます。
 塾って成績が上がる場所じゃないと駄目だと思っています。それが学習塾の本質。お金をもらって学校とは違うことを教える。すごいなって思ってもらいたい。学校とは違うことを学ぶので、塾生数も増加してきました。
 塾業界は間違いなく縮小します。家庭が塾を見る目が厳しくなるので、きちんとしたことを教える塾にこそ、ビジネスチャンスがあると感じます。
―大人がさえぎらないように
 幼少期に子どもがやりたいと思ったことがあるなら、「自分には無理だ」と思わない環境をつくってあげないといけないと思っています。
 例えば子どもの頃に「総理大臣になりたい」と思う子はたくさんいるのですが、中学、高校と進むにつれ、公務員などに変わってくる。もちろん、公務員だって素晴らしい職業です。でも、現実的になってしまう。「あれ、君。総理大臣の夢はどうしたの?」「いや先生、そんなの無理だから」ってなっちゃう。
 そうじゃなくて、総理大臣になりたいっていう夢は持ち続けてほしい。総理大臣を目指して突っ走って、結果としてなれないかもしれないけれど、その過程で本人が成長し、素晴らしいものを見つけてほしい。
 実は教え子の中に、本気で総理大臣になろうとして大学に進学し、日々努力している子がいます。夢をさえぎらず、突きつけず、でも道のりの困難さは伝えながら応援していく。そんなネオ寺子屋になっていきたいです。(聞き書き・田中信太郎)