
照明やカメラアングル、人物の動きまで細かく計算して動画を作る―。開店案内や商品紹介など、顧客の目的に合わせてSNS(交流サイト)掲載用の動画撮影に臨むのは、梨子田由佳さん(39、松川村)だ。動画は後日、テロップや音声を加えて編集し、納品する。
そこで終わらせないのが梨子田さん。以後半年余にわたりSNS運用の代行を担い、顧客の事業が軌道に乗るまで、伴走型で支援する。
運用代行では、企業や個人のSNSアカウント(インスタグラム、ユーチューブなど)について、戦略立案から投稿、分析まで一括して担い、集客や認知の向上につなげるサービスを提供。人手やノウハウの不足を補い、効果的な発信をサポートする。
的確な運用で活気ある地域に
梨子田由佳さんは松本市出身。高校卒業後、大手化粧品メーカーの実店舗で18年間、店頭に立ち女性のメーキャップ技術を磨いてきた。36歳で人生設計を見つめ直して退職し、念願だった一人旅へ。国内外を巡る中で、「せっかくなら記録を残そう」と思い立ち、2022年からスマートフォンで動画撮影を始めた。
幼い頃から自己表現することが好きで、撮影した動画に音声や文字のテロップを加え、ユーチューブでビデオブログ(Vlog)を始め、2年で46本を投稿した。
「とにかく動画制作が楽しい。伝え方を工夫すると、反応が変わるのが面白い」。この実感が転機となり、興味がある分野で仕事をする道を選んだ。
23年に起業し、「動画クリエイター」の肩書きで活動を始めた。各SNSの特徴を踏まえた発信方法や「見せ方」を得意とし、PR動画やホームページ制作のほか、業務マニュアル作成や人材採用につながる発信の提案も手がける。起業後に携わったクライアントのアカウントでは、再生回数300万回に達する実績を得た。
「一度の投稿だけでは結果が出にくい」という。投稿後の反応を分析し、改善を重ねることで初めて効果が見えてくる。そのため短期的な制作にとどまらず、一定期間は運用を支援する。変化を確認しながら方向を修正していく。
これまでに請け負った店の集客や、販売数の増加にも貢献してきた。「届けたい相手に確実に伝えるには工夫が欠かせない。動画の構成や分析に基づく改善は、専門家を頼ってほしい」と梨子田さん。
同市島内で新規開業を目指すフットケアサロン「なないろ」店主の岡部由香さんが依頼したのは、ホームページの制作とインスタグラムのプロフィール画面の初期設定だった。事前の打ち合わせで方向性を見極め、店と消費者を結びつける最適な方法を探る。
岡部さんが施術するフットケアは、どんな人の悩みに応えられるのか―。必要とする人に確実に届くよう、施術内容がイメージしやすい写真を選び、視覚的に伝わる構成とした。
岡部さんは「集客につながる道筋が整った。問い合せや申し込みにも対応できるSNSは、便利でありがたい」。
多くの経営者が「投稿を頑張っているのに成果が出ない」「投稿を続けられない」といった悩みを抱える中、梨子田さんはそうした声に寄り添い、発信の目的やターゲットを整理するところから始める。投稿の方向性が定まると発信の迷いが減り、継続しやすくなるという。実際に更新が止まっていたアカウントが動き出し、問い合わせにつながった例もある。
松本と安曇野で暮らしてきた梨子田さん。「大好きな地元を支援することで、地域の活気につなげたい。広報の手段としてSNSを役立ててほしい」と話す。将来の夢は、地域全体の魅力発信に挑むこと。観光PR動画の制作に携わりたいと願っている。