【醸す人々】#37 大信州酒造・醸造責任者 森本貴之さん

基本きっちり 蔵の味後世に

大信州酒造(松本市島立)が、生産機能を現在の場所に集約したのは2020年。その後に醸造責任者になった森本貴之さん(50)。「『大信州の酒だからおいしい』。そう思ってもらえるとうれしい」と、会社全体の力を生かした酒造りを意識している。
同社は、合併の経緯から長らく長野市の酒蔵で醸造し、松本市の工場で瓶詰めしていた。仕込み水は松本や小谷村のもの。タンク車で運ぶのも、森本さんの仕事だった。
同市波田出身。進学した宮城県の大学の山岳部で日本酒好きの顧問教員に出会い、地酒の魅力を知った。酒蔵で働きたいと思って地元を振り返ると、実家の近くに大信州酒造があった。
入社2年目で蔵人に。それでも夏場は営業にも出て、客目線を知った。「うちの酒はいい意味で癖がない。すーっと飲める」と。
客はまた、杜氏の名前にも引かれていた。2008年、91歳で引退するまで務めた下原多津栄さんだ。他の酒蔵から教えを請われるような存在だったが、よく言っていたのは「(酒は)教本を読めば誰でも造ることができる」。
この言葉の真意を「基本的なことをきっちりやるということ」と、3年前に現職に就いた森本さんは解釈している。
教えは、生産拠点の集約でより表現できるようになった。「人も水も一所にそろった。仕込みから瓶のデザインまで一貫したものづくりができる」
全員での話し合いから、酒の味わいについては「リンゴのような香り」という特徴を再認識した。
「この会社だから生み出せるものがある。自分の名前が残らなくても、味が残ればいい」と潔い。

【沿革】
だいしんしゅうしゅぞう
 1880(明治13)年、前身の原田屋酒造店が創業。戦後、県内の複数の蔵との合併を経て、大信州酒造となった。酒米は県産の「ひとごこち」「金紋錦」を使用。2021年からは全て純米酒に切り替えた。
【森本さんおすすめこの1本】
大信州 風穴貯蔵 純米吟醸(720㍉㍑、2200円)
【相性のいい料理】
山賊焼き
【連絡先】
大信州酒造 TEL0263・47・0895