乳がん経験し写真集出版 松本出身の心理カウンセラー紺よう子さん 記念トークショー5月9日

胸の傷痕を含めて、全てが私だから―。そんな覚悟が伝わる。
松本市出身の心理カウンセラー、紺よう子さん(54、東京)は、自身が被写体となった初の写真集「SCAR」を出版した。
紺さんは35歳の時、乳がんを患い、右乳房を全摘出し再建。「女性としてのアイデンティティーを失った」と感じたつらい経験を持つ。
写真集は、がん告知から手術、精神的に落ち込んだ日々を経て、「私は私のままでいい」と、前向きになれた現在の心情を表現。再建した右乳房を隠さず見せた写真もあり、同じ悲しみを持つ女性に寄り添い、勇気を与えられればと期待する。
「『私らしく生きる』が私のモットー。写真集もその一つです」と紺さん。5月9日には信毎メディアガーデン(松本市中央2)で、出版記念のトークショーを開く。

〝自分らしく生きる〟挑戦続け

紺よう子さんが出版した写真集の題名「SCAR」は英語で、「傷痕」を意味する。「この傷が私を強くし、私を輝かせてくれる」
松本市で毎夏開かれる音楽祭、セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)の公式カメラマン山田毅さん(61、同市梓川倭)が、作品のほとんどを手がけた。
撮影は、都内や県内の廃虚で行い、「ありのままの自分を伝えたかった」と、ライトやフラッシュなどは使わず、作品は無加工。
乳がんで全摘出し、再建した右乳房を、あえて隠さずさらけ出した写真が多く、再建手術直後の2009年と現在に近い23年の体の違いを比較するような写真もある。
紺さんと山田さんは10年来の付き合いがあり、紺さんは「信頼関係があるからこそ、私の内側に起こった変化と、生きる光と影を写し出してくれた」と、出来栄えに自信を見せる。
3歳と1歳の二人の息子の子育てに追われていた35歳の時、子どもたちの予防接種で訪れた病院の医師に「ついでに」相談した。「右胸に魚の骨のようなものがある」と。
検査の結果乳がんと分かり、即、手術。執刀した医師からは右胸の全摘出と同時に再建を勧められ、それに従った。
「乳房は女性にとってただの臓器ではない。アイデンティティーを失った」
手術は成功。しかし、後遺症で右腕が上がりづらくなり、家事ができなくなるなどの肉体的な変化が起きて、精神的にも落ち込んだ。水着のCMを見ると悲しくなり、街で女性と擦れ違うと、「胸があることに感謝していないなら、そのおっぱい私にちょうだい」と、勝手に思った。
約10年が経過し、そんな精神状態から救ってくれたのが40代後半で出合った心理カウンセリングだった。受診した大学教授でもある医師から、こうも言われた。「あなたは、人に希望を与えられる人間。カウンセラーになれる」と。
自分を取り戻すと同時に、医師からかけられた意外な言葉にはっと気づいた紺さんは、心理学を勉強することを決意した。
50歳になり、「これまでの私の生き方と一緒に、勉強してきたことを多くの人たちに伝えたい」と、心理カウンセラーとして起業した。

悲しみ寄り添い女性たちに勇気

「自分らしく生きる」ため、挑戦を続ける紺さん。今回の写真集の出版も「らしさ」を表現する手法の一つだ。自費出版のためにかかった費用は、クラウドファンディングで賄った。
紺さんは「今この瞬間にも、私が経験してきたのと同じ思いをしている女性がたくさんいる。そうした女性たちに寄り添うことができたら」。自身の生きざまから勇気を与える。
写真集はB5判100㌻。3500円。5月9日午後2時から、信毎メディアガーデンで開くトークショーは入場料2千円(サイン入り写真集付きは5千円)。申し込みはこちらから。問い合わせは紺さんへメール(kon@salon-astarte.net)で。