手作り〝どうぞのベンチ〟「ゆるBASE ALPおっさんの会」大北地域の公共施設などに贈る

“おっさん” 社会貢献への思い

この春、大町市や松川村の病院や公共施設、花の名所などに、手作りの木製ベンチが幾つも設置された。「座り心地がいいねぇ」「温かい感じがする」。腰かけた人たちの表情が自然と緩んでいく。
名付けて「どうぞのベンチ」。作り手は木工が好きな地域のシニア世代の男性たち。好きなこと、得意なことを社会貢献につなげたいと、大勢が利用する施設や場所に寄贈を始めた。
大北地域や安曇野市などの男性有志でつくる「ゆるBASE(ベース) ALP(アルプ)おっさんの会」メンバーが、興味のあるテーマごとに集まり活動する「プロジェクト(PJ)」の一つ、「〝どうぞのベンチ〟PJ」の活動だ。ウサギが作った椅子を巡り動物たちの思いやりが連鎖する内容の絵本「どうぞのいす」のように、たくさんの優しさが地域に広がり始めた。

手作りの温かさ くつろぎの場に

大町市の農具川河川敷や周辺に植えられたシバザクラが見頃を迎えた4月28日、農具川河川公園は県内外からの観光客でにぎわっていた。遊歩道のそばには今春、「どうぞのベンチ」2台が設置された。
川沿いの散策を終え真新しい木製べンチに座って一息ついた横浜市の80代の夫婦。妻は「(残雪の北アルプスがきれいに見える)ここからの眺めは最高ね」、夫はこのベンチの〝素性〟を知ると「手作りの感じがいいね」。旅先で出合った小さな温もりに目を細めた。
ゆるBASE ALPおっさんの会 「〝どうぞのベンチ〟PJ」は4月上旬、この場所でシバザクラの植栽や管理に取り組む地元住民でつくる「白塩町河川公園愛護会」へ、ベンチを贈った。公園には既設のベンチが幾つかあるが、「数が少なく、増設を考えていたのでありがたい。有意義に活用したい」と松山明正会長(70)。
3月下旬には、市立大町総合病院へ4台を寄贈。職員が手入れする病棟脇の庭の前やバス停近くに置かれた。病院事業管理者の藤本圭作院長は「気分転換に庭を眺めに来る患者さんもいる。高齢の方も多いので、ベンチに腰かけてゆっくり楽しめる」と感謝した。
このほか、大町名店街事業協同組合、JA大北、松川村すずの音ホールへも数台ずつ寄贈。アーケード街の真ん中に設置され、ラジオ体操参加者や商店街を訪れる人が座って会話を弾ませたり、農産物直売所「ええっこの里」の軒先に置かれ、観光客がくつろいだり。1台ずつデザインや表情が違う、唯一無二の味わいだ。

趣味や特技を地域のために

〝どうぞのベンチ〟PJは、「ALPおっさんの会」の木工好きや趣旨に賛同する湯田永八さん(78、池田町会染)、丸山武洋さん(84、松川村)、 駒澤一明さん(90、大町市大町)、高松杜介さん(53、安曇野市穂高有明)、 向井均さん(69、大町市平)の5人で昨年発足した。「木工作品づくりを、地域や人の役に立つ活動につなげたい」とのアイデアが上がり、手作りベンチの寄贈の活動に動き出した。
ベンチは、ウサギが手作りして木陰に置いた椅子を舞台にした心温まる物語の絵本をヒントに、「どうぞのベンチ」と名付けた。
公共的な場や大勢が利用する場への寄贈をするのに、費用が多額になる材木の調達が課題だった。情報を集めて交渉すると、かつて工務店を営んだ同市平の酒井賢治さん、大輔さん親子が、使わなくなった材木を無償で提供してくれるという。製作、運搬、設置場所の選定や交渉などをメンバーそれぞれで役割分担し、今年3月から地元への寄贈を始めた。
「身を粉にして働いてきた団塊世代。社会貢献で第2の人生の英気を養える」「要介護の家族が福祉施設やサービスの世話になっている。社会貢献は恩返しや、自分の気持ちに納得がいくことにつながる」。メンバーの思いはさまざまだが、ベンチに座った人たちの姿や様子を見ると、気持ちが優しくなる。
どうぞのベンチの問い合わせは、同会代表の向井さんTEL070・8403・5487