闘病経験を生かし「足圧整体」普及へ  松本の足圧セラピスト増澤紗希子さん

より多くの人の健康支えたい

増澤紗希子さんは、2022年に肛門がんと診断された。それまで何となく肛門に「違和感」はあった。「痔だろう」と思っていたが、ある日耐えられないほどの痛みを感じ「肛門科」を受診した。すぐに大学病院に行くように言われ、がんと告知された。
希少がんのため、症例も情報も少なく、不安を抱えながら闘病が始まった。抗がん剤や放射線の治療を受け、動けない日々が続いた。「激しい痛みは死への思いに直結した」。仕事を辞めて看病してくれた長女を中心に、4人の子どもや両親の支えで乗り越えた。
約4カ月後、治療を終えたものの睡眠障害や全身の関節痛、しびれなどのつらい後遺症が続いた。「良いと言われるものは全てやってみた」。一生治らないと言われ諦めかけた頃、友人の祖父がやっていた足圧整体を受けた。その晩、痛みやしびれが和らぎ、4時間眠れた。闘病後初めての明るい兆し。足圧整体に通い、やっと日常生活を送れるようになった。
「私と同じように苦しむ人の痛みを和らげたい」とそのまま弟子入り。23年9月、指導者から施術できると認められ、一人立ちが可能になった。
悲しい出来事もあった。闘病を支えてくれた父親が、認定の1週間後に急逝した。「人はいつ死ぬか分からない。ゆっくりしている暇はない」。自宅での足圧整体サロン開業を決めた。
足圧整体は足の裏、側面、指先などを使い分け、全身を面で踏みほぐす日本古来の健康法で、深部まで届く圧で血流を良くし、凝りやだるさをすっきりさせる。足にはたくさんつぼがあるため、施術する側にも良い影響があるとされる。
「1度の施術で2人が整う技術。小さな空間さえあれば、災害被災地などでも施術できる」。増澤さんは「施術できる人を増やし、より多くの人の健康を支えたい」と、独自の「健美心メソッド」をつくり、「一般社団法人 日本足圧健美心協会」を設立した。

エッセー本出版講演活動にも力

昨年秋から「物の気持ち」になって一言を書きためてきた。例えば、仕事で使う靴下は「今日も一番下から、あなたを支えているよ」「私は毎日あなたの一歩を応援しているよ」。身の回りにある23の物に、17個ずつ言葉をつづった。
「いろいろな時に感謝を感じてほしい。それが物を大切にすることにつながる」。自費出版の著書「モノに宿る気持ち 17の声」には、そんな思いを込めた。
増澤さんはがんと診断される1年前、19年かけていたがん保険を解約した。シングルマザーとして4人の子どもを育てる中、高校生が2人になり生活が厳しかったためだ。闘病にはお金がかかり、保険解約を後悔した。肛門に違和感がありながら病院に行かなかったため、受診時はステージ3になっていた。経験を伝え、後悔する人をなくしたいと講演活動にも力を入れる。
「皆さんに伝えたいことがたくさんあるけれど、講演を増やすと足圧の時間が減ってしまう」。悩みつつ、各地を飛び回っている。

自費出版「モノに宿る気持ち 17の声」は西町文庫(鳥取県)から発行、300部。B6判横開き。1100円。問い合わせは増澤さんの携帯☎090・6532・1892。インスタグラムはこちらから。