[創商見聞] No.118 特別編 クロスロードクロスオーバー 次世代経営者育成塾 フォローアップ座談会

課題の本質をみる

多様化する中小企業、小規模事業所の経営支援を目的に、松本、大町、塩尻の各商工会議所は、「広域連携支援事業」を展開している。「創業・経営支援」を中心に、商工会議所と企業の取り組みを紹介する「創商見聞 クロスロード」を月1回掲載。
 第118回は、特別編「クロスロード  クロスオーバー」と題し、4月21日に松本商工会議所で開かれた「次世代経営者育成塾報告会・フォローアップ座談会」を紹介する。次世代経営者育成塾は松本・大町・塩尻商工会議所が主催し、昨年6~12月にかけ全8回、延べ24時間にわたり、経営メンターの瀬畑一茂さん(ReConnect)が塾頭を務め開かれた。6期目の同塾参加企業は9社。報告会当日は、4社と瀬畑さんが集い、塾が終了して半年たった現在の所感などを語った。

経営メンター (同)ReConnect 塾頭 瀬畑 一茂

共和観光(株) 江本 煕舜

白骨温泉 湯元齋藤旅館 村中 文彦

(株)田立屋 大宮 康亘

響きあう木の空間 須永  豪

経営者として自身を見る

田立屋  大宮 康亘さん

 姉である常務が、第2期で参加した縁もあり学び始めました。2020年に会社で大規模リニューアルをしたのに新型コロナ禍に突入、なんとか耐え忍んで経営をやってきました。でも、目の前の状況が手に負えない状態になってしまい、正直すがる思いでした。塾で学んだ時間、塾頭との個別面談ともに、多くの学びがありました。
 経営塾に通って、学んだスキルや、やるべきことの流れの中で、問題解決のための手段やHOW TOといった対処作業が、必要に応じて出てくるものです。しかし、仕組みなどの改善ではなく、自分自身が変わっていないことが大きな問題だったと気づかされました。
 経営者として見なければいけないのは、自分自身でした。1年前と大きく変化した点で、昨年の6月より成長できたと感じています。

 170年続いてきた会社なので、もちろん続けていきたいという思いは強くありますが、ただ続いていればいいとは考えていません。会社に関わる人たちがどう在るかが大切だと感じています。
 私自身、今回の学びを通じて、自分の在り方を深く考えるようになりました。経営者である自分の在り方や状態は、必ず会社全体に影響していきます。
 だからこそ、まずは自分自身が前向きに仕事に向き合い、プライベートを含めた人生が幸せであること。その状態が、社員さんや役員にも伝わり、共に働く仲間の充実感ややりがいにつながっていくのだと思います。
 そうした社内の空気や姿勢は、最終的にはお客さまや地域社会にも伝わっていく。
 これからは、自分一人の成長にとどまらず、社員や役員をはじめ、関わるすべての人の幸せにつながる経営を目指していきたいと考えています。

強烈なグループワーク

白骨温泉 湯元齋藤旅館 村中 文彦さん

 経営塾というのは、社長さんはこういうもの、経営者はこうなんだって教えるセミナーだと思っていました。実際受けて、全く違ったというのが正直な感想です。
 何よりも来て良かったのは、考え方、切り込み方というんですか、物事の見え方が変わったのかなということです。
 あとは本当に人との接し方も変わったと思います。従業員との接し方も変わりました。一番大きく変わったなと思うのは、社長と同じ目線ではないにせよ、社長がこう考えるだろうなという考えに少し近づけたかなと思います。
 塾頭・塾生ともに共通言語ってよくおっしゃっていました。
 同じような考えで、同じような方向を少しでも見て、立場は違うんですけど、社長と同じ方向を向いていることはできるようになったのかと思いました。 2週間のグループワークも強烈な思い出です。自分たちの仕事もある中、毎晩皆さんとオンラインで違うことを考えなきゃいけない会議は激闘でした。
 ですが、それぞれの悩みというか、直面している問題を知れたことはとても良かったことです。うちだけではなかったんだっていうのが一番安心しました。仲間になれたというか―。
 悩みや問題をどう捉えているのかというところから課題を見つめ、なんやかんや好き勝手私が皆さんに言ったり、逆に言われたり、多分ふに落ちないことも嫌なこともあった。でも、それを踏まえてその問題解決を目指す過程を見ていくことは、すごい学びで、気づきになったと思います。 仲間から教えてもらったことが、この経営塾に参加して、一番得たことなのかなと思います。

どう在りたいかが大事

共和観光(株)  江本 煕舜さん

 今後AIなどが発達していく社会の中で、HOW TOというのは、簡単に調べられる。だからこそこれからは、「どう在りたいかが大事」という話が、講義やグループワークなどで結構あり、塾頭との面談でも話題になりました。
 じゃあ経営者っていうのはどういう役回りになるのだろう。最終的に決める。実行する。こう在ります、こう在りたいという像を提示し続けて、それを体現していく存在なのではと、自分は参加していて思いました。
 今まで漫然と会社の経営陣になり、経営者になると考えていました。だから、自分がこう在りたいとか、会社がこう在るべきだみたいなところから逆算して考えることなどほとんどありませんでした。
 塾を通じ、心境に変化が出てきたというか、そもそも自社、ひいては自分って何をしたいのだろう。自分はこの会社でどういうものを実現していきたいのか。ビジョンがはっきりと分かっているわけではないのですが、ずっと考え続けてます。

 ただ、そうやって悩み続けることが経営者として成長するというか、自分自身の成長にもつながっていくのかなって思いました。同じような心境にある塾生も多くいると感じます。
 現社長である父と役員の兄がいるのですが、二人に自分自身がどう在りたいかの話をしました。さらに時間をかけ話し合い、共通言語を作っていきたいです。
 また実際に現場はどうなのか、現場で働いている方ってどう思っているのかなっていうのもやっぱり把握したいと感じました。
 相互理解って難しいし、どういう結果になるかは分からないですが、ヒアリングを続け、お互いの方針をまとめるなど、塾を受けた私にしかできないことかもしれないので、続けてやっていければと思います。自分と同様の、地元の次世代経営者ってどんな考えをしているのか―。
 単純に興味があって入塾したのですが、貴重な学びを得ることができました。

事業連携を体験して

響きあう木の空間 須永 豪さん

 「里山の未来という 日本の木材を活用する会社 をつくって、一緒に森 のことをやっていこう」と、第4期に受講されたおき な堂社長の木内伸光さんから誘われ、連携事業が始まった中で、この塾を勧められました。
 建築設計の仕事を長年一人でやっていたので、事業連携を前提にしたソーシャ ルビジネスの立ち上げは、互いに手探りの協業でした。受講したことで「どこに旗を立てて、どう向かうか」「互いになんとな く背景を信じ合えてい る」という共通の感覚がつくれました。
 グループワーク で社会事業が抱えている課題を取り上げてもらえたことも財産ですし、今まで「自分は」とこんなに話す機会はなかな かなかったので、結果的 に転機にもなりました。
 建築の設計は、基本的 に「あなたは?」と相手の思いを引き出して形に組み上げていく仕事ですが、逆に自分の内側を、人に話し、外に 出してみることになり「あぁこん なに情熱があったか」と再確認になりました。
 今やっている事業の連携も塾を通しても、人との協働では「また別の正解」が現れてくる。 やはりこれからの事業はそういうものかなってい うのを、感じています。
 受講後も変わらず、学 びながら格闘しながら、 助けてもらいながら、波を乗り切る毎日です。
  日々、新たなアイデアが湧いては、対話して。まるで即興演奏のように、瞬時に対応し続ける立ち上げ期ですが、いまは以前よりもしっかり自信を持って進めていま す。
 これから連携していく 林業や大工集団の経営者も、きっと向かっているのは同じ旗なので〝共通の感覚〟を共有するために、ぜひ7期の塾に送り込みたいです。
 
 

共通言語から広がる仲間

コメント総括 塾頭   瀬畑 一茂さん

 未来の予測が極めて困難となり、現在ビジネスは「ⅤUCAの時代」※に突入したといわれ始めました。
 これまでの時代は答えらしきものがありましたが、次世代経営者の皆さんは、答えを自分で創っていくことが必要になってきています。そのために、自分や自社が「どう在りたいのか」BEを明確にする。そして、そのBEを達成するために「どうする」DOであったり、「どのように」HOWTOがそれぞれ必要になってくる。
 本座談会での6期参加者のコメントから、「人としての在り方、会社としての在り方」を見つめていこうという姿勢が感じられ、本セミナーの企画の意図がしっかりと浸透していることが実感できて、とてもうれしく思います。
 また、年齢や性別に関係なくこの地域で頑張っている経営者が多くいます。共通言語があれば、その仲間と本質的な対話が広がる機会となるし、つながっていける仲間を見つけやすくなる。そういった視点でのセミナーの企画意図もあるので、塾生間での関係構築をぜひ継続していってほしいと思っています。
 次年度第7期も開催されますので、本セミナーを通じて、共通言語を持つ次世代経営者の輪が少しずつでも広がり、この地域の会社が健全で持続的な発展につながっていくと大変うれしいく思います。※変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の4つの要素により、将来の予測が極めて困難な現代ビジネスの社会環境。

(聞き書き・田中信太郎)