【講演会聞きどころ】公認心理士・上智大グリーフケア研究所客員研究員・筧 智子さん 「身近な人を自死で失うということ」

自死遺族に〝一緒にいる〟支援

社会福祉法人「長野いのちの電話」(長野市)は、自殺予防講演会を松本市駅前会館で開いた。公認心理士で上智大グリーフケア研究所客員研究員、ボランティア団体「グリーフサポートたま」代表の筧智子さん(60、東京都)が、「身近な人を自死で失うということ」と題して話し、オンラインを含む約100人が聞いた。(4月19日)
1998年、日本の自殺者数が初めて3万人を超えた。金融機関の破綻や多重債務問題など「経済、生活問題」による中高年男性の自殺が少なくなく、その多くが個人の意思や選択でなく、さまざまな悩みで心理的に追い込まれた末の死だった。
自死遺児らの訴えが国を動かし、2006年に自殺対策基本法が制定された。それまで「個人の問題」とされていた自殺が、「社会の問題」と位置づけられるようになったのは画期的だった。
対策で「人を変える」から「社会を変えていく」となり、自殺者数は25年に2万人を下回った。が、10代の自殺が増えたのは深刻。誰もが安心して生きられる社会づくりは道半ばだ。
日本は、死別の悲しみ・苦しみを言葉にしにくい社会。身近な人を亡くした悲嘆(グリーフ)は、泣いたり悔やんだり、宗教的な喪の行事をしたりすることで、心の回復が図られる。
しかし、自殺は残された人たちに「もう一緒に生きられない」という強烈なメッセージを突き付ける行為にもとれる。そのため遺族の苦しみも悲嘆も深く、長く複雑化しやすい。
「自殺は恥ずべきもの」という社会的偏見から、公の場で悲しみを語ることも許されず、心にふたをせざるを得ない。自分を責めるいくつもの感情に陥り、付いて回るスティグマ(烙印)に苦しむ。周囲は、自殺は追い込まれた末の死と理解し、言葉にできないグリーフを抱える人が、身近にいるかもしれない―という想像力を持ちたい。
遺族の支えとなるのは、同じ体験をした人同士の集まり、カウンセラーなど信頼できる聴き手とのつながり、布教目的でない宗教者による追悼ケアの場など。支援は「何かしてあげる」「悲しみを取り除いてあげる」ことでなく、何もできないことに耐えながら、一緒にいてあげることだと思う。