
シンガー・ソングライターの堀六平さん(80、安曇野市豊科)は4月、県内の方言を集めた本「信州方言三昧 せったか せわねか せってみろ」を作った。言葉が変わり、世代間の違いが顕著になったり、方言を使う人が減ったりする中、「自分が生きた時代の言葉を残したい」と、20年ほどかけて完成させた。
A4判ハードカバー、221㌻。五十音順に標準語を書き、対応する方言を北信、東信、中信、南信に分けて載せた。「地域により、同じ意味でも全く違う言い方をしたり、ちょっと変わっていたり。特徴を知ってもらいたかった」という。
例えば標準語の「可哀そう」には「もうらしい」(共通)、「もーらしい」(中信)、「もごったい」(南信)など、「言う」には「せう」(北信)などを盛り込んだ。
書名の「せったか せわねか せってみろ」は、標準語だと「言ったか 言わねか 言ってみろ」になる。「歌の仲間がよく使っていた。言葉の調子がいいので選んだ」という。
堀さんは1970(昭和45)年デビュー。現在は安曇野市を拠点に、コンサートや歌声喫茶などの活動を続ける。方言を集め始めたのは85年ごろ。ラジオで方言放送を始めた。その後、出演したNHKのテレビ番組で募集した。視聴者から2万1千語が寄せられたという。「せっかく集まった方言を無駄にするのはもったいない」と、コンサートで各地を回る際、さらに収集活動を続けた。
集めた言葉をまとめたいと考えてきたが、本業の歌の仕事も忙しい。方言をパソコンでデータ化するのが大変だったといい、「目が悪くなったよ」と笑う。
堀さんは「この本は信州方言辞典でも、研究でもない。私的コレクション」と考える。「方言がなくなることは、故郷がなくなること」といい、方言の後ろにある地域性や文化に目を向ける。5500円。