
女性たちへのエールも込めて
第2次世界大戦の戦禍や水害をくぐり抜け、縁あって安曇野市のホテルにたどり着いた約100年前のドイツ製ピアノ「スタインベルク」。日本に数台しかない 〝幻のピアノ〟の温かな音色と、朗読や歌で構成する「風のことだま音楽会」が21日、同市穂高有明の「ガーデンあずみ野」ロビーで開かれる。
企画したのは、朗読などの活動をする平岡眞悠実さん(52、伊那市)。3年前から、同ホテルで開かれるピアノの再生記念コンサートに参加。ピアノの数奇な運命や、クラウドファンディングで再生を成し遂げたホテルオーナー福田梨乃さん(48、穂高有明)らの熱い思いに触発された。
音楽会では女性を笑顔にしたいという。その笑顔が、平和にもつながると信じるからだ。
宮沢賢治作品の精神に感銘受け
安曇野市穂高有明の「ガーデンあずみ野」で21日に開く「風のことだま音楽会~幻のピアノと癒(いや)しの声で届けるいのちの洗濯日和」は、単なるコンサートではない。平岡眞悠実さんが常日頃から願う「あなたはあなたでいい。自分らしく生きよう」という思いを込めた、女性たちへのエールと、癒やしの時間でもある。
平岡さんは京都市出身。子どもの教育環境などを考えて2020年、伊那市に移住した。日本人が大事にしてきた心や言葉の力を伝える「和みのことだまセラピスト」として活動し、朗読劇などにも参加している。
ホテル主催で開かれるピアノの再生記念コンサートに、観客として3年前から来ていた。転機は昨年秋。さまざまな歴史や人々の思いを乗せてよみがえったピアノ。〝瞑想(めいそう)のピアニスト〟ウォン・ウィンツァンさんの演奏。宮沢賢治作品の朗読。この組み合わせに感銘を受けた。
宮沢賢治の作品には、自身のあるがままを受け入れ、自然から学ぶ「法華経」の精神が根付いているという。自身も朗読劇や多くの講座で法華経の教えに共感し、たまたまホテルオーナーの福田梨乃さんも法華経が好きと聞き、ビビッときた。「私にも何かできないか」
初めて企画運営する会は、太陽が一番長く輝く夏至の日と決めた。平岡さんの柔らかな声で、主婦目線で話す「法華経的生き方」の朗読、思いに共感してくれた仲間の有志3人によるピアノ演奏や歌、会場も一緒になっての合唱―といった内容。「一生懸命頑張っている女性たちに〝命の洗濯〟をしてもらい、心の平穏を得て、また一歩踏み出してほしい」と願う。
歴史と物語があるスタインベルク
今はまろやかな音色を奏でるピアノ「スタインベルク」にも、多くの物語がある。1930年代にドイツ・ベルリンで製造。第2次大戦で工場が消失し、32年間しか製造されず、世界に現存する個体数はわずか。日本に数台しかない幻のピアノだ。
ガーデンあずみ野のピアノは1934(昭和9)年、白馬村出身者から白馬小学校に寄贈された。台風による水害で外側はボロボロ、響板が割れ使い物にならなかった。縁あって2018年に同ホテルが譲り受け、22年からクラウドファンディング(CF)に取り組み、再生を実現。多くの人々の熱意で、現代によみがえった。
演奏するピアニストの一人、縁ゆかりさん(山梨県北杜市)は「歴史を感じさせる温かい音。この音色や眞悠実さんのコンセプトに合う曲を厳選した」と、ブラームスの「間奏曲118―2」、ウォンさん作曲の「光ふる路」などを弾く。会場とともに歌う「見上げてごらん 夜の星を」など12曲ほどを演奏する予定で、多くの来場を呼びかける。
午後1時開演、会費一般2千円、中学生以下千円。予約優先で申し込みはフォームから。問い合わせは平岡さんにメール(wakaba.salon.mayumi@gmail.com)で。