
「昔ながら」大切に自分らしく
松本市中心部の住宅街の一角で、1926(大正15)年から続く銭湯「富士の湯」(本庄2)。創業100周年を迎えた今年、4代目の阿部憲瑞さん(30)が経営を引き継ぎ、改装工事を終えて5月にリニューアルオープンした。阿部さんは「次の100年も続く銭湯に」と意気込んでいる。
入り口を開けるとすぐに男女に分かれて脱衣所になっていた箇所を、談話したり飲み物などを販売したりする休憩スペースに改修し、男性の浴室にサウナ室を設けた。地下水をかけ流す水風呂は通年で14度前後と冷たく、肌触りも良いといい、「ぜひ、ととのってほしい」と阿部さん。
廃業した銭湯から譲り受けたロッカーや、番台の壁に使われていたタイルを残した、「昭和レトロ」な空間は従来のまま。午後9時までだった営業時間を翌日午前0時まで延長し、営業日も増やした。
リニューアル後は常連客だけでなく、営業時間を延ばしたことで仕事帰りの会社員や家族連れなど、新しい客が利用するようになったという。
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「生まれた時から銭湯が身近にあった」という阿部さん。幼い頃に祖母と番台で客を迎え、学校から帰れば銭湯で宿題をし、湯に漬かって帰宅した。常連客と一緒に入ったり、清掃を手伝ったりと「思い出は数えきれない」。
家業を継いだのは、「この場所をなくしたくなかった」から。2020年から東京の銭湯に住み込んだり、スーパー銭湯で働いたりして、経営や運営のノウハウを学んできた。
3代目で父の憲二朗さん(69)は、当初は「大変だから」と家業を継がせるのに後ろ向きだったが、息子の意志の強さを知り、今では応援してくれている。阿部さんは「父がやってきたことに自分の学びを落とし込み、自分らしくやっていきたい」と力を込める。
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物価の高騰に加え、米国などによるイラン攻撃後は、湯を沸かすボイラーの燃料となる重油の価格が急騰。銭湯の料金は県が上限(大人500円)を決めているため値上げはできず、ドリンクやTシャツなどもあるオリジナルグッズを作って販売し、収益を上げようとしている。
銭湯の魅力を「年齢も肩書も関係なく、完全にフラットになれる場所」と言う阿部さん。「閉鎖的な時代だが、昔ながらの雰囲気や人と人との距離を大切にしていきたい」とし、今後は音楽イベントを催したり、地域の飲食店に出店してもらったりする構想を練っている。