
熊が人の生活圏に現れるケースが増えています。こうしたことから塩尻市片丘の県林業総合センターは、熊を含む森林に関する研究成果を県民に伝える特別展を本年度新たに始めました。第1弾は「クマと森の特別展」(6月末まで)。同センターが5月に開いた「森の勉強会」を取材しました。
参加したのは県内外の小学3年生から大人まで21人。はじめに同センター育林部主任研究員の柳澤賢一さん(45)が、野外鳥獣による森林被害について次のように解説しました。
長野県の2024年度野生鳥獣による林業被害は、熊が最も多く、被害額は約1億2千万円。中でも内樹皮の甘い部分を食べるために幹の皮をぐるりと?ぐ「クマ?ぎ」の被害が深刻で、これにより材木となるスギやヒノキなどが枯死したり、材の価値が大きく損なわれたりしてしまう。
センターでは簡易的で環境負荷の少ない防除法として、熊が嫌う硫黄を成分とする忌避剤を木に塗る実験を実施。熊の生息地である森林と林業の共存へ向けた研究成果を、館内に展示しました。
座学の後は、森の中に作られた「野生動物のこん跡をさがせ!」がテーマの「特別コース」へ。敷地内には多くのシカが生息しており、シカの頭(口)が届く高さで食べられている葉の跡、通り道や休息所の跡などを見ることができます。
案内した職員は、シカにも〝食の好み〟があるといい、枝が折れた山菜のコシアブラを見て「ぐいっと引っ張って食べた跡がある」と解説。参加者は「シカもおいしいよね」とうなずいていました。
シカの行動観察のため監視カメラを設置している場所や、江戸時代に農民が田畑をイノシシから守るため作った「猪(しし)土手」を復元した場所、クマ剥ぎ対策としてテープを貼ったり忌避剤を塗ったりした木も見られます。
この野外展示は、センターにある地図を見ながら、いつでも自由に見学ができます。各ポイントにはQRコードがあり、携帯電話のカメラで読み取って解説を読めます。
自宅裏が山で、シカが庭に遊びに来るという朝日小学校4年の上條拓人さん(9)は、「村内で熊が出たと聞くことはあるけど、姿は見たことがない。いろいろな話が聞けて良かった」。
熊の主な活動期は4~8月と聞いた塩尻市の小学3年男児(8)は、「何時に出歩きますか?」と質問。職員は「長野県の熊は人嫌いなので、誰もいない早朝に出歩く」と答え、「毎日森に囲まれて仕事をしているけれど、1年に1回遭うかどうか」と話しました。
同センターは、森林に関するさまざまな研究の過程を子どもにも分かりやすく展示、体験型の野外展示も替えていく予定といいます。