
北アルプス槍ケ岳(3180㍍)の頂上直下に立つ「槍ケ岳山荘」が今年創業100年を迎え、記念事業として今シーズン、宿泊客限定で特製手拭いを贈呈している。目を引くデザインで登山者の人気は高い。この事業に、同峰をはるか遠くに望む松本市の福祉就労施設「エルサポートパノラマ」(沢村1)が、大きく貢献していた。
山荘は1926(大正15)年、現経営者の穂苅大輔さん(40)の祖父、故三寿雄(いすお)さんが奥飛騨の山仲間らと山小屋を建てたのが始まり。以来、増改築を重ね、地盤崩落やコロナ禍などさまざまな困難を乗り越えて今に至った。
穂苅さんは「これも山の皆さんの支援のおかげ」と感謝の手拭いの贈呈を決めた。縦90㌢、横35㌢。槍ケ岳の雄姿と、同峰を源流とする梓川がオレンジとカーキの2色染めで描かれている。穂苅さんは「100年の歴史を梓川の流れに例えました。『今年は手拭い目当てで槍に挑む』との声も聞くくらい評判はいいです」と喜ぶ。
手拭いは1枚ずつ折り畳み、専用の小封筒に入れて渡す。手間のかかる封入作業が必要だ。手を挙げたのが「パノラマ」だった。障がいや難病のある利用者約20人が、軽作業で賃金を得ており、タオル封入の実績があった。
4月下旬、施設職員が手拭い贈呈の趣旨と作業内容を利用者に説明し、希望した10人が取りかかった。みな集中して封入に努め、休憩時間でも手を休めない人までいた。
ある男性利用者は「手拭いを見ていると中学時代の燕岳登山の記憶と感動がよみがえってくる」。女性利用者は「手拭いが多くの登山者の思い出の品になると思うと意欲が湧きます」と語り、あす8日の最終納品日に向け、それぞれ真剣な表情で作業に当たった。
穂苅さんは「記念事業が『パノラマ』の皆さんのやりがいになったのならうれしい。またうちの取扱品の封入を依頼しようかと考えています」と話している。