【講演会聞きどころ】「性的マイノリティの運動」東大大学院特任教授・飯野 由里子さん

性的多様性 当事者主体へと

松本市波田の日本キリスト教団波田教会の川本恵子牧師が不定期で開くLGBTQお茶会で、東京大大学院教育学研究科バリアフリー教育開発研究センター特任教授の飯野由里子さん(52、埼玉県)が講演した。演題は「性的マイノリティの運動―新自由主義化と承認をめぐるジレンマ」。18人が耳を傾けた。(6月27日)
日本の性的マイノリティー運動は、1970年代のウーマンリブ運動に連動してレズビアンの人たちにより始まった。2010年に石原慎太郎元東京都知事が差別発言した際は、今までになく抗議活動の参加が増えたが、翌年の都知事選で4選が決まると、世論や選挙で差別は排除できないという失望に陥った。
20年の東京オリンピック・パラリンピック前には、協賛企業が積極的にLGBTQ研修を行ったこともあり意識・関心が高まった。自治体のパートナーシップ制度も浸透し、各地で起こされている同性婚訴訟は、原告側への追い風となっている。
毎年6月は性的少数者の人権を啓発する「プライド月間」で、世界各地でイベントが行われる。今年の「Tokyo Pride2026」を見て驚いたのは、企業ブースの多さ。大企業が豪華なフロート(山車)を出し、レインボーグッズを制作、販売して収益を得ている。性的マイノリティーの運動が、いつのまにかビジネスの道具となっていないか─。
キーワードは「新自由主義の脱政治化」。新自由主義のマインドは、俗に「今さえよければいい、金さえ入ればいい、自分さえよければいい」と言われる。社会は多様な人がいて、対立や摩擦などがあるが、民主主義では話し合って解決していくのが政治。公的な議論を断ち、人々が決めなくてはいけないことを専門家の判断や市場に任せ、公共の福祉・社会正義という価値を利益、効率、競争に置き換えるのは脱政治化の表れ。市民の力が奪われている。目下の皇室典範改正案の議論がその例だ。
性的マイノリティー運動も影響を受けているのではないか。自己決定に基づき、当事者主体の運動へかじを切るべきだ。それにはインターセクショナリティー(人種、性別、性的指向などが重なり合うことで生じる差別や抑圧を捉える枠組み)の視点が不可欠だ。