おこひるスイーツを目指す

【とや・まゆみ】50歳、大町市出身。辻エコール東京(現・辻調理師専門学校)卒。大町市内のスイーツ店でパティシエとして約18年勤務し、退職。2025年6月創業。
お茶菓子工房 るぽ
大町市大町2576-1
―お菓子好きを続けて
父が料理人だった影響かもしれません。子どもの頃からお菓子作りが好きで、松本市の松本第一高校の食物科に行き、東京の専門学校に進んでパティシエになる勉強をしました。卒業後は、東京でチャレンジしたい思いもありましたが、帰郷しました。
20代はパティシエの仕事はせず、調理関係の仕事をしてきました。その後、大町市の老舗スイーツ店・立田屋の工房に入り働きました。
仕込み、技術、量産など、さまざまなことを学びました。約18年お世話になり、退職。次の職場を探したのですが、なかなか納得のいく職場が見つかりませんでした。
創業はあまり考えたことがありませんでした。ですが、やっぱりお菓子屋さんをやりたい、自分の店を持ちたい、という気持ちが強くなりました。年齢的に今がチャンスと思い、2024年4月に大町商工会議所に相談に行きました。
経営の知識は全くありませんでしたが、いろいろ相談に乗ってもらいました。創業塾への参加を勧められたので、受講して事業届や補助金の申請、売り上げ計画など、さまざまなことを学びました。
―難航物件探し
大町商工会議所の担当相談員さんにも相当お世話になったのですが、店舗にふさわしいと思う物件が、なかなか見つかりませんでした。
実は1軒すごく気に入った物件があり、オーナーに何度も相談に行きました。大通りに面した所で面積も手頃。何とかここでお店を出させてほしいとお願いしたのですが、オーナーがかなり高齢の方で、継続的な管理が難しいということで、契約できませんでした。
残念でしたが、大町市内で引き続き物件を探しました。長く住んでいてもこんなに市内を歩き回ったことはない、というくらい歩きました。幼少期より歩いたと思います。
現在の店舗をようやく見つけ、オーナーとも相談し、契約できました。自分のざっくりとしたイメージを設計士と相談し、具体化していきました。
キャンプが好きなので、「森の質感」をイメージしました。周囲の風土と適合できる空間デザインを意識しました。天井をコンクリートから木材に張り替えたり、壁面を緑にしたりしています。コストを少しでも下げるため、自分でも作業しました。床のコンクリートは自分で塗っています。
イートインスペースはフロントカウンターがメインですが、テーブルを1席用意しました。喫茶風ではなく、キャンプテーブルを設置しています。
自分が行って楽しんできた地元の爺ケ岳や、富士山がきれいに見えるキャンプ場で撮影した写真なども展示しています。25年6月にオープンできました。
―とても難しい日々
創業という夢は実現できましたが、厳しい日々が続きました。大町商工会議所と相談して作った計画は、無理のないものでしたが、パティシエと経営の両立はとても大変でした。パティシエのスキルがあっても、経営マネジメントは課題を抱えるばかりでした。
例えば周知。インスタグラムでいろいろな宣伝をしてはみたのですが、なかなか周知につながりませんでした。また、砂糖や抹茶など材料原価高騰も悩みの種でした。悩む日々が続き、開店から約半年たった11月にはついに体調を崩し、2カ月ほど休業しました。
大町商工会議所の担当者をはじめ、多くのお客さまにも心配されました。続けるのはちょっと無理かもと考えたこともあったのですが、年末年始を過ごし、やっぱり前を向いて頑張ろうと思い、再開しました。
―おこひるスイーツ
創業して1年が過ぎた今でも、「いつできたの」と地元の方に聞かれることがあります。地道に3年頑張れば、認知されると思うので、心を強く努力していきたいです。良いか悪いか分かりませんが、クリスマスシーズンを経験できなかったので、これからが楽しみです。
ヒット作というか、定番商品は、正直まだ生まれていません。ただ、カップスイーツは得意です。抹茶などオールシーズン系や、季節で果物を替え、ここでしか買えないスイーツを作っていきたいです。
ちょっと田舎の言葉ですが、昼食前のおやつという意味の〝おこひる〟を目指したいです。農作業中の昼前に、田んぼのあぜでカップケーキを食べてほしい。公民館で集う集会みたいな場でも食べてほしい。大北地域の代表的なカップケーキを作れるよう、日々努力していきたいです。(田中信太郎)


