
今年も高校野球の熱い季節がやってきた! 今月4日から県内4球場で行われている全国高校野球選手権長野大会。主役はもちろん甲子園を目指す選手たちだが、その裏側にはたくさんの人たちの支えがある。私たちは野球場を整備するスタッフや、スタンドから音楽で選手を鼓舞する吹奏楽部の部員に、苦労ややりがいを聞いた。
選手が全力出せる環境を―信州グリーン 村松広輝さん
長野大会の主会場として開会式(4日)や決勝(25日)の舞台になる松本市のセキスイハイム松本スタジアム(市野球場)は、市の指定管理者として2015年から「信州グリーン・シミズオクトグループ」が運営している。
今年は芝の刈り方による模様を変更し、大谷翔平選手がプレーする米大リーグ・ドジャースの本拠地「ドジャースタジアム」のようにした。「打球は芝目の向きや模様一つで転がり方が変わるため、見た目だけでなく選手がプレーしやすいグラウンドを目指した工夫でもある」と、信州グリーン指定管理事業部主任の村松広輝さん(29)。
球場スタッフがグラウンド整備で最も大切にしているのは、「整備が原因で試合を左右しないこと」。土と芝の境目をなくし、土の硬さを均一に保つなど細部まで気を配る。特に1日に最大3試合を行う高校野球の大会は、試合の合間の限られた時間での整備が求められ、翌日も早い日は朝5時半ごろから作業を開始する。
万全の状態に仕上げるため、散水のタイミングや機械の動かし方などを事前に話し合い、役割分担を徹底。スタッフ同士が連携し、無駄のない作業を心がけ、全ての高校球児が同じ条件の下で、普段通りのプレーができるように舞台を整える。
「芝の管理は正解がない」と村松さん。気温や降水量、日照時間によって生育状況が大きく変わるため、天候を見極めながら対応する柔軟さが求められるという。また、夏場は芝の成長が早いため、通常よりこまめに刈り、毎試合同じ環境でプレーできるよう気を配る。
球場スタッフは選手と違い、試合中に注目を集める存在ではないが、グラウンド作りに対する思いは強い。整備されたグラウンドで選手たちが全力を尽くし、その舞台で県の頂点が決まる瞬間を見届けられることに、喜びや誇り、やりがいを感じるという。
長野大会から甲子園に出場できるのは優勝校だけ。しかし勝敗だけにとらわれず、仲間とともに野球を楽しみ、悔いのないプレーをしてもらうのが、球場スタッフの願いだ。

戦う原動力になる演奏を―松商学園高吹奏楽部
球場では選手の保護者や各校の生徒のほか多くの観客がスタンドから声援を送り、上位の対戦になると各校の吹奏楽部が駆け付けて演奏で選手を後押しする。松本市の松商学園高校吹奏楽部も、長野大会では3回戦(11日)から応援に入る。
高校吹奏楽部にとって大会期間中はコンクールに向けて練習する大事な時期だが、松商高の吹奏楽部は野球の応援も大切な活動の一つと位置付ける。野球応援係の3年生・北沢礼実さん(17)と、2年生部員の金原藍菜さん(17)は、「日頃から練習に励む野球部員の姿を間近で見ている。『自分たちも応援したい』という思いが、演奏の原動力になっている」と話す。
一方、球場での演奏には、屋内と違う難しさがあるという。音が響きづらいため、遠くまで届くように、はりのある音を出すよう意識する。直射日光に弱い木製楽器の代わりに、鍵盤ハーモニカを使うのも同部の特徴で、今年は10台余が参加する。さらに炎天下での演奏では互いに声をかけ合い、氷で体を冷やしたりハンディーファンを使ったりして熱中症対策に努める。
応援当日までの準備も欠かせない。選手一人ずつに専用の応援歌を奏でる同校では、吹奏楽部が事前にベンチ入りメンバー20人にそれぞれ演奏してほしい曲を聞き取り、楽譜を用意して限られた期間の中で練習する。
球場では「野球部の依頼を受けて応援に来ている」という意識を持ち、あいさつや素早い行動を心がける。演奏で試合を盛り上げるが、「『主役は野球部』という心構え。演奏はあくまで選手を後押しするためのもの」と、北沢さんと金原さん。
音に思いを込めて選手を応援する各校の吹奏楽部員らも、高校野球を支える多くの人たちの一員だ。演奏で選手を後押しすること。それが吹奏楽部の役割で、部員たちの誇りになっている。
【取材を終えて】
清澤夏凛(教育学部) 自分の好きな高校野球を支える、表には出てこない人たちの思いや苦労を知ることができた。これまでは試合の結果に目が向きがちだったが、これからは球場整備やスタンドでの応援にも注目しながら高校野球を楽しみたい。
赤尾拓人(経法学部) 取材を通じ、高校野球を観戦する視野が一段と広がった。スポーツの舞台裏には、選手を支える多くの人たちが存在すると、改めて実感した。この記事を読んで得た視点から、読者の皆さんにも高校野球を楽しんでほしい。
土屋諒人(経法学部) 私は高校球児だったが、今回の取材を通し、野球ができていたのは当たり前ではなかったということに気がついた。このようなことを知る機会がなかったが、今回さまざまな苦悩や思いを聞くことができ、すごくいい経験になった。
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MGプレスが信州大全学教育センター(松本市旭)で開く寄付講座「新聞をつくろう!」。本年度受講している1年生のうち12人が2~4人のグループをつくり、それぞれ関心がある四つのテーマを取材した。