【信大講座新聞をつくろう2026】昔の文化になぜ引かれる?若者のレトロブーム

【珈琲茶房かめのや】
「身近にない」が憧れに 非日常体験楽しむ時間

大正ロマンの面影が残る松本市の上土通りから続く小路にある「珈琲茶房かめのや」(大手4)。温かみのある空間に昭和の歌謡曲が流れ、スプーンが食器に当たる音や、客が楽しげに話す声が響く。
スイーツは味だけでなく、見た目のかわいらしさでも客を集める。同店を目当てに埼玉県草加市から訪れたという前田萌花さん(22)は、「喫茶店の硬めの触感のプリンが大好き」。友人で一緒に訪れた長野市の鈴木千尋さん(27)は、クリームソーダの見た目に引かれ、レトロに興味を持ったという。
「レトロな喫茶店で充実した時間を過ごしている自分に、優越感を感じる若者もいるのでは」と前田さん。若い世代にとって古い文化は「身近にないものへの憧れ」として映るようだ。
同店を経営する「アルプスコーヒーラボ」(中央2)専務の九蘭滉太さん(29)は「人との出会いや交流を大切にしている」と話す。世代や地域を超えたつながりが、空間の味わいをいっそう深めている。
時の流れは人にはつくれない。時間と共に味わいが出てくる家具や雑貨なども、レトロの魅力の一つだ。時代を超えて色あせない良さと安心感がある。家では味わえない非日常の体験もできる。かめのやは、「懐かしい」と「新しい」の受け皿として、多くの人を引きつける。

【信大レトロ音楽倶楽部】
人の手で演奏する魅力 昔の曲SNSで発信も

「信州大学レトロ音楽倶楽部」は20世紀の楽曲を演奏、歌唱する信大生のサークル。2014年に発足し、学内のイベントに出演したり、県内の公民館や老人福祉施設などで演奏会を開いたりしている。現在は1~4年生の54人が所属し、普段は部室に集まり、曲について語り合うなど活発に活動している。
副サークル長の利根川耕大さん(理学部2年)とメンバーの中山裕翔さん(同)は、自分たちが生まれる前の曲の魅力や演奏する理由を「(コンピューターの打ち込みも使われる今の楽曲と比べ)人が楽器を使って演奏しているから人間味がある。(演奏を聞く人と)世代を問わず交流できる」と話す。
また、若者の間にレトロブームが到来し、音楽も昔懐かしい曲が人気になっている理由として、「親が聞いていて、自分たちも耳にしたことがある」「インスタグラムのリール(ショート動画を作成・共有できる機能)や、ユーチューブのショート動画などのBGMに使われるようになった」などを挙げる。興味を持った人がSNSで発信し、多くの人が曲を知るきっかけになっている―と見ている。
レトロな楽曲に魅了された信大生の演奏は、松本キャンパスの学園祭「銀嶺祭」(今年は10月31日と11月1日の予定)や、例年2月に松本市内で開くホールコンサートで聞くことができる。サークルのインスタグラム

【取材を終えて】
兼松樹里(農学部)
 レトロブームについて取材し、自分にない考えを知り、新しい発見ができた。取材で聞いたことを、話を盛ったり違う印象を与えたりしないよう要約し、記事にするのが難しかった。今回の経験を、講義の内容や論文をまとめるのに生かしたい。
栁澤七海(教育学部)  私自身レトロ音楽が大好きで、自分がなぜこんなにレトロに引かれるのか気になり取材した。その際に、レトロな喫茶店で食べたプリンがとてもおいしく、感動した。レトロの魅力は、時が過ぎても変わらない「味」ですね。
深美優和(経法学部)  レトロは単なるブームだと思っていたが、取材で訪れた喫茶店で、世代を超えて多くの人たちが憩う姿が印象的だった。効率重視の現代、私たちは無意識に温かみや安心感を求めているのかもしれず、レトロが持つ価値に改めて気づかされた。
石村美羽(医学部)  今回の取材を通し、正確な内容を分かりやすく伝える大変さと楽しさを体験した。相手の言葉から意図をくみ取り、分かりやすく文字に起こすのが難しかった一方で、グループの仲間とブラッシュアップしていく時間が充実していた。