児童虐待ゼロへ県内各地で啓発 信州オレンジリボンフェスファミリア実行委員会

「みんなまるっと家族」を合言葉に、「誰も孤立させない」「信州から日本を変えよう」などの思いを掲げ、県内の児童虐待ゼロを目指し活動するボランティア市民団体がある。「信州オレンジリボンフェスファミリア実行委員会」(三澤康弘代表)だ。
「虐待を取り締まるのではなく、地域みんなが家族になって子どもを育てるようになれば」。2020年の発足以来、子ども虐待防止の象徴として全国で使われるオレンジリボンを広め、関心を持ってもらおうと、県内各地でイベントを開いている。
4日は活動を知ってもらうと同時に、会員らも虐待防止を学ぼうと、初の勉強会を塩尻市北部交流センターえんてらすで開催。会員と地域住民ら9人が熱心に話を聞いた。

活動の輪広げ地域の「自分事」に

塩尻市で4日に開かれた、信州オレンジリボンフェスファミリア実行委員会の勉強会。講師は樋口忠幸さん(65)が務めた。県の福祉行政に長く携わり、松本市の松本赤十字乳児院(元町3)や松本児童園(島内)の勤務を経て、6月に同園内に開所した「こども家庭サポートセンターほっと」のセンター長に就任した。
「子育てや虐待の情報は世の中に氾濫していて、専門家の意見や学説も数多く、どれが正しいか分からない」とした上で、「現場でさまざまな家庭や子どもと接してきた経験から、今、子育て中の人や支援に携わる人たちに伝えたいこと」を話した。
身体的、精神的、社会的に良好な状態を「ウェルビーイング」といい、その土台となる「自己肯定感」は、無条件で気持ちを受け止めてもらい、甘えさせてもらえる体験の蓄積で育まれる「愛着形成」の中で育つ、とした。「人格の土台ができる乳幼児期が大切、と保護者に分かってほしい。ただし、甘えさせることと甘やかすことは違う」などと話した。
不適切な養育の頻度や強度が増したとき、子どもの脳が物理的に損傷することもあると分かってきた。暴言で視覚野が変形、厳しい体罰で前頭前野が縮小、親のDVを見聞きすると視覚野が縮小する、という。「もっと世の中の人に知ってほしい」と訴えた。
また、2020年の児童福祉法改正などで体罰は禁止に、22年の民法改正で親が子どもをしつけるために認められていた「懲戒権」が廃止に。「親が、自分が育ってきた文化のしつけが間違っていたことに気付き、学び直さなければ、世代間で負の連鎖が起きてしまう。支援する体制が必要」と述べた。講演後の意見交換では、参加者が自身を振り返ったり、取り組んでいる活動を紹介したりした。
同実行委代表の三澤康弘さん(43、塩尻市広丘野村)も、以前は「児童虐待」と聞いても「どこか他人事だった」という。だが、自身の子どもが3歳の時、同じ年の子が父親から虐待を受け亡くなったニュースを見て、衝撃を受けた。
「子育て中はささいなことにいらいらする。自分は家族や仲間に相談できるが、それがなければつらい。わが子を殺すなんて無理と思うが、世間ではあり得る。そんな世の中を変えたい」と、手探りで動き始めた。
三澤さんの思いに共感した人が少しずつ集まり、20年に塩尻市で信州オレンジリボンフェスファミリアを初開催。以来上田市など県内各地で17回開催してきた。現在は約30人の会員が運営を担い、同フェス参加者の延べ人数は5千人を超えた。昨年のフェス参加者らが、6月に阿智村で自主的に勉強会を開くなど、広がりも出てきている。
塩尻市の勉強会で「虐待をなくす活動の裏付けを学べた」と三澤さん。今後は県内77市町村全てに活動を広げたいという。
「自分たちがイベントや勉強会を開くことが地域の人たちの気づきにつながる。オレンジリボンの活動が根付いてくれれば」
同会の活動などはインスタグラムで。