
障がいのある子の親亡き後の生活や財産管理などの対策を紹介するセミナーが7月4日、松本市社会福祉協議会(双葉)で開かれました。自身も障がいのある子どもを育てる「あずさ税理士法人」(中央1)代表の奥原清さんと同社協が主催。話の一部を紹介します。
★生命保険を活用
親亡き後、親族に財産管理を託す方もいますが、長い期間、特定の誰かに頼るのは、状況が変わったときに対応できない場合があります。きょうだいがいても先立たれたり、その配偶者や子どもがいても引き続き頼れるかという心配があったり。支援が継続できなくなるケースもあります。
国の「障害者扶養共済制度(しょうがい共済)」は、保護者が毎月掛け金を納めることで、保護者が死亡または重度障害になった時に、障がいのある子どもに一生涯一定額の年金を支給するというものです。毎月2万円(1口の場合)が生涯にわたって支給されますが、▽掛け金は加入時の年齢によって異なる▽原則65歳まで(または20年間)毎月支払う▽途中解約(任意脱退)した場合、支払った掛け金はほとんど返還されない─などの条件があります。
民間の制度では、生命保険を活用した「年金支払い変更制度」も有効な対策です。保険金を一括ではなく年金形式で受け取れるように設定し、障がいのある子の生活費として長期的に活用する方法です。「指定代理請求制度」「家族登録」「信託制度」を活用することにより、親族が保険金の請求サポートをすることができます。
指定代理請求制度を使えば、親がけがや病気などで意思表示ができず、給付・保険金を請求できない場合に、家族が代行できます。
★遺言書の作成を
ある事例です。次男は自閉症があり働くことが難しく、相続が発生して遺言書がない場合、残された家族で遺産分割協議をすることになります。次男は協議に参加しても判断能力がないため、家庭裁判所の成年後見人の活用が考えられます。成年後見人は、本人の財産を守る見地から「法定相続分」を主張し、有価証券やアパート経営を次男が引き継ぐ可能性があります。しかし次男はそれらを管理できないため、成年後見人に毎月報酬を払って管理してもらうことが想定されました。
この対策として、「遺言書の作成」と「年金支払い変更制度」を提案しました。管理の難しい財産は長男に渡すように遺言書を作成、家族の実情に適した相続が可能になります。また、年金支払い変更制度を活用し、親なき後、子どもに少しずつお金が入る仕組みを作りました。
さらに、親が認知症になった場合に備える「任意後見契約」や「死後事務委任契約」を結び、財産手続きや葬儀の負担を子に残さない体制を整えました。
遺言書は、財産の分け方や管理の担い手が明確になり、家族内のトラブルを防ぐことができるのでぜひ作成してほしいです。親の意思を明確に残すことが、子どもたちの負担を大きく減らします。
自筆証書遺言は費用がかからず書き直しも自由な半面、形式の不備や紛失のリスクがあります。公正証書遺言は信頼性が高いものの費用がかかります。費用を抑えつつ紛失を防ぐのは、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管してもらう方法です。家族構成や財産内容に応じて使い分けるのがお勧めです。
成年後見制度を見直す改正民法が6月に参院本会議で可決、成立したので、今後の変更に注意が必要です。親が元気なうちに準備を進めることが、子どもの将来の安心につながります。できることから始めてほしいです。