
重厚な音色が重要文化財の建物内に響く―。松本市あがたの森文化会館(県3)の講堂第2会議室にある電子オルガン、エレクトーンF―1。61年前に製造された当時の最高モデルで、使われる状態で残っているのは全国でここだけという貴重な存在だ。
2009年に同会館に「移住」して以降、使えない時期もあったが、専門の技術者が修理・調整を重ね、7月23日の修理を経て完全に近い状態まで修復された。同25日には松本オルガン同好会の金銅英二会長(63、波田)を中心に会員6人が参加し、楽器操作の研修を行った。
関わった人々の熱意や技術で「現役」を続けるF―1。移転保存から活用まで力を注ぐ金銅さんは「皆さんが楽しんで使えるようになった。オルガンも喜んでいると思う」と感慨深げだ。
オルガン同好会操作学ぶ研修も
松本市あがたの森文化会館講堂第2会議室。7月25日、松本オルガン同好会の会員6人が金銅英二会長と共に、設置されている電子オルガン、エレクトーンF―1の操作や弾き方を学んだ。
鍵盤ごとに音源を持つパイプオルガンと同じ方式で、音の厚みや豊かさなどが優れているとされる。両手、両足を使って鍵盤とペダルを操り、多彩な音を出す。
研修に参加した村島博子さん(70、安曇野市堀金)は「音を作らないといけない。自分の好みの音を出すまで、奥が深い」。堀珠紀さん(57、松本市蟻ケ崎)は「ピアノと違い、鍵盤からの指の離し方に気を付けなければ…」と話した。
「(F―1で)練習しイメージをつくっておき、パイプオルガンを弾きたい」と言う竹内由里さん(64、塩尻市広丘)は、「(この楽器で)別の演奏会ができそう」と、F―1の魅力を感じた。
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金銅さんによると、F―1は1964(昭和39)年に日本楽器製造(現ヤマハ)が開発。あがたの森の楽器は65年に東京・お茶の水学生キリスト教会館(現お茶の水クリスチャン・センター)に設置され、81年には東京・立川駅前キリスト教会に移設された。
同教会が2008年、電子オルガンを更新したため、オルガン好きの金銅さんがネットオークションで購入し、伊那市の倉庫で保管。新たな設置場所を探した結果、09年、あがたの森文化会館で受け入れることに。大がかりな修理作業を経て、10年3月、松本オルガン同好会を通じて同会館に寄贈され、〝オルガン人生〟の第3章がスタートした。
しかし、その後は順風ではなかった。20年末からコロナ禍の3年ほどはほとんど使えず、楽器自体も傷みが進んだ。当初、オーバーホールを担当したヤマハ電子楽器サービスの大槻忠弘さん(塩尻市洗馬)が高齢でリタイア。会館側から修理できる人の紹介を求められた際は、移設に携わった金銅さんが「古いものを修理するより(新しい楽器に)差し替えた方がいいのでは」と助言したという。
だが、木下守館長が「直せるものは直し、大切に使いたい」との考えを示し、池ケ谷淳一郎さん(静岡市)ら専門の技術者が24年から何度も松本を訪れ、修理を重ねた。
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主に練習などで使われていたF―1が、公の場で音色を響かせたのは、今年3月にあがたの森文化会館講堂で開かれた「あがたの森サタデーコンサート」。金銅さんがソロで7曲弾き、全体合唱の伴奏も行った。ただし、楽器の状態はこの時も十分ではなかった。その後見つかった不具合を調整し、7月23日の作業で100%に近い状態まで修復された。
市は、同会館の「宝」ともいえるF―1を長く使い続けられるよう、本年度から年2回、技術者によるメンテナンスを施す。金銅さんは「発表会や合唱団の伴奏などで、このオルガンの活用を促したい」と話した。