[創商見聞] No.121  株式会社 桔梗 宮 幸生 

文具と太鼓で地元と歩む

【みや・ゆきお】41歳。塩尻市出身。松本第一高校普通科卒。2025年4月創業。   

株式会社 桔梗

―悩みながらも創業
 塩尻市では老舗だった文具事務機器販売の会社に10年ほど勤務し、最後は取締役まで務めました。100年企業を目指し、日々努力していたのですが、残念ながら閉店になってしまいました。ただ、経営課題や事業承継の勉強はしていました。 塩尻商工会議所が斡旋してくれて、関東経済産業局関連の事業承継の取り組みや、県の事業者支援プログラムなど、後継者ビジョン作成を目的とする公的研修などに参加しました。
 正直、事業承継は考えていましたが、創業は全く考えていませんでした。会社が閉店することで、今後の人生をどうするかとても悩み、気持ちも沈んだ時期がありました。
 でも、塩尻商工会議所や地元金融機関などが良くしてくれたおかげで創業を考えるようになり、2025年4月に創業しました。
―太鼓の縁①(始動)
 何をするか、何を売るかしっかり定まらないまま、創業を思い立ったのが現実でした。ただ、今までの顧客とつながりがあるし、塩尻で文具関係やパソコン・コピー機などの販売やメンテナンスで困ることがあれば、サポートをしたかったのです。
 文具販売の業界は、なかなか新規参入が難しい世界で、仕入れも簡単にできないし、販売関係もたくさん難点がありました。最初に売り上げを作れた商品が「木札」です。15年前くらいから和太鼓をやっていて、「桔梗太鼓」の代表にもなっています。
 県内外関係なく演奏を続けてきたことで、他県の太鼓連の仲間たちとの縁も多くできました。
 たまたま首にかける木札のデザインを頼まれ制作したことがきっかけです。文具の仕事で、印鑑関係もやっていたので、受注できました。
 木札の制作工程は、手彫りやレーザー、焼印・塗装などあるのですが、針彫り機を導入しました。機材購入の助成金の関係から、木材調達の相談も塩尻商工会議所がサポートしてくれました。
 上松町でギター用木材の乾燥・加工をしている田中木工所を紹介してもらい、端材を仕入れさせてもらいました。デザインは、発注元と相談しながら製作し販売しました。1枚製作すると、さまざまな太鼓仲間から受注が続きました。ネット販売などしていないのですが、1年間で1000枚以上製作できました。
 その後、下駄の販売や横笛の販売、もちろん和太鼓本体やばちなどを販売できるように進んでいきました。
―太鼓の縁②(派生)
 和太鼓のパフォーマンスからイベンターとしての仕事も受けることができました。地域の病院・介護施設や市の教育委員会との連携で小学校、会社の周年記念イベントなど、企画運営の仕事をしています。また年初に、松本市の消防出初式もイベンター仕事として受けました。例年の会場が変更となった関係で、ほとんど新仕様で難しかったことが多かったのですが、会場に屋台展示などしてお祭り感をつくり、消防団員の家族も楽しめる場など提供しました。
 イベント仕事だけでなく、社会福祉協議会などと協力し、塩尻・松本市の小中学校の特別支援学級などで太鼓講座をしています。仕事に直結することはあまりありませんが、大切にしている和太鼓活動の一つです。
 太鼓の演奏から地域イベントの企画力を高めることができたのかもしれません。そのおかげで、地域関係者との信頼関係を深めることができました。年初に塩尻市の病院や系列の介護施設で太鼓演奏をしたことが縁で、パソコンの一括入れ替えの仕事が来ました。 
 大手企業には太刀打ちできないだろうと考えながら見積もりを提出したのですが、「5年後も付き合える地元企業を」と発注元の判断で選んでもらい、受注できました。正直、可能性はとても低いと考えていたので、深く感謝しています。 
―これから
 創業して1年が経過しまたが、残念ながら黒字化は難しかったです。 
 でも、地域に密着した文具関連販売と和太鼓関連の多角化営業を軸に、収益化を追求し、まずは10年営めるよう努力していきたいです。
 現在、自分と従業員の計3人で運営しています。創業の1歩目で一緒に仕事をしてくれた従業員は本当に大事にしたい。まずは従業員を幸せにしたいです。地域に根差していけば、必ず人と人が結びつき、最も大きな資産になると思うので、日々努力を続けていきたいです。  (田中信太郎) 

木札のサンプル一連

今年4月、岩手県陸前高田市での演奏