チョウザメを特産品に 安曇野で新たな動き ニジマスのいけす使い養殖  

淡水魚 キャビアだけでなく身も

リンゴにワサビ、そばに米。これらに加え、安曇野の新しい特産品をつくる動きがある。チョウザメだ。
チョウザメの卵・キャビアは、世界三大珍味として知られる高級食材だ。卵だけでなく、チョウザメ自体を食材にする構想。安曇野市商工会観光特産飲食部会は7月、市内のチョウザメ養殖場を視察、料理講習会を開いた。
チョウザメの養殖は、藤屋わさび農園(穂高)が「地域課題の解決と新しい価値創出のために」とニジマスのいけすを使い、2020年から取り組んでいる。卵巣ごと卵を取った後、魚は捨てることが多かったというが、身も食べれば無駄がない。
いったいどんな味がするのか、どんな調理法があるのか。特産品としての可能性はどうなのか―などを、藤屋わさび農園や市商工会の関係者らに聞いた。

地域の遊休資産再生につなげて

7月、安曇野市穂高北穂高のチョウザメ養殖場に、市商工会観光特産飲食部会のメンバーら約30人が集まった。「大きい!」。魚を見て最初に出た声だ。初めて見た人も多く、かがんでチョウザメに触る人もいる。「ぬるっとせず、つるつるしている」
藤屋わさび農園の望月啓市専務(33)によると、「6、7年で成魚になり、2㍍以上になる個体もある。飼いやすい魚で、死亡率は低い」という。
チョウザメは約3億年前から存在する古代魚。鼻先は長くとがっている。主に淡水に生息していて、歯がないため、水底の餌を吸い込んで食べるという。
望月専務がチョウザメに注目したのは、同社が手がけるワサビの卸先の高級飲食店やホテルに行った際、キャビアを食べることが多かったからだ。調べてみると、親であるチョウザメは淡水魚だと分かった。
「ワサビ田では一年中、水温13~16度のきれいな湧水を利用するので、品質の高いチョウザメを育てられるのではないか」。さらに、周辺には経営者の高齢化などで廃業し、荒れたニジマスの養殖場がある。これを使えば地域の遊休資産の再生にもつながる。
養殖は2020年、30匹からスタートした。現在は5カ所で約3万5千匹を育てる。

料理講習会で可能性を探る

欧州ではチョウザメが高級魚として扱われるという。「身はタイのよう。さっぱりした味わいで弾力があり、食べ応えがある。刺し身でも焼きでも揚げてもおいしい、ポテンシャルの高い魚」と望月専務。
卵だけでなく、副産物ともいえる身に注目したのは、レストラン「ロティスリー ル・ボヌール板花」(堀金烏川)のオーナーシェフで、ホテルメトロポリタン長野で総料理長を務めた経験もある板花芳博さん(69)だ。
料理講習会は市堀金公民館調理実習棟で開き、板花さんが講師を務めた。燻製のオープンサンドキャビア添え、コルドンブルー(チーズのはさみ揚げ)、マリネ、なめろうなどを披露。参加者が試食した。
市商工会観光特産飲食部会の阿部正人部会長(76、穂高)は「白身の魚なので和洋中いろいろなジャンルに合う。価格など課題はあるが、特産品になる可能性はある」。
「ナポリピッツァTASUKU」(堀金烏川)のオーナー、髙橋翼さん(44)は「臭みを感じず、さっぱりしておいしい。金額が合えば使ってみたい魅力的な食材」。
板花さんは「淡水魚として安曇野から発信できる。うまみがしっかりあり、おいしい。これから伸びる食材ではないか」と話した。
望月専務は「キャビアは昨年12月から出荷が始まり、今年度は500㌔を予定している。自分が育てたものが地元の特産になればうれしい。身も同じ思い」などと話した。
長野県といえば信州サーモン、そして安曇野といえばチョウザメといわれる日が来ることも、そう遠くないのではないか。