
88歳垣原道夫さん「やり残したことはない」
松本市渚3の手打ちうどんとそばの店「みすゞ渚店」が8月31日で閉店する。店主の垣原道夫さんは御年88歳。この道約70年の「手打ち麺職人」だ。体力の限界などが閉店の理由で、「やり残したことはない」とすがすがしいが、「匠の味」がなくなることを惜しむ声は多い。
看板メニュー手打ちうどんの麺は、香川県産の小麦粉を使用。「水回し」「足踏み」「寝かし」などの工程を経て2日ほどかけて打つ。
作業中に目を引く道具が、生地を延ばす「のし棒(麺棒)」。通常は直径3㌢ほどだが、垣原さんの棒は直径約1㌢と極端に細い。「棒が細いと生地を早く延ばせて効率的」なのが理由だが、「技術がないと均一に延ばせない」。長年培った職人の誇りだ。
仕上げた麺には程よいこしがあり、のど越しは滑らか。しょうゆの味が「キリっとした」つけ汁とよく合う。
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島根県出身。13歳の時に松本市に移住。20歳手前で名古屋市の製麺所で手打ちうどんを作る仕事に就く。
同市内のうどん店で修業を積んだ後、30歳ごろ松本市に戻り、同市本庄に手打ちうどんを売りにした食堂をオープンした。これが「みすゞ」の創業店。「信州ではうどんだけでは商売が成り立たない」と助言を受け、そばも出すようにした。
現在の店は3店舗目で、1996年に兄が営んでいた食堂を引き継いだ。
「麺は手でなく、足と腰で打つ」が信条の垣原さん。90歳を目前に、酷使し続けた足腰が限界に達したことを自覚した。店の駐車場が確保できなくなったことも重なり、閉店を決意した。
今月初めに閉店を知らせる張り紙を出したところ、創業の頃からの常連客が多数訪れ、惜しむ声や感謝の言葉をかけているという。
垣原さんは「おなじみさんに良くしてもらい、ここまでやってこられた。会えなくなるのは寂しい」と目頭を熱くしながらも、「職人は一生職人。一人前にはなれない」。まだ気迫がみなぎっている。