
公立中学校の部活動を民間団体などに委ねる「地域展開」で、松本山雅FCの運営会社による支援事業が本格化している。実務を担うのは今年4月にできた「一般社団法人YAMAGA NEXT LAB.(ヤマガネクストラボ)」。山雅が培ってきたクラブ運営のノウハウに、デジタル技術を組み合わせた事業計画を提案。県内外の自治体から業務を受託している。
山雅が地域展開の支援に乗り出したきっかけは、2年前に県から人材派遣の支援を打診されたことだった。社会貢献につながると気づいたという。
自治体が進める地域展開を調べると、県外のコンサルタント会社が構築した仕組みが、地域の実情に合わない例が目立ったという。このため山雅はサッカースクールの運営で蓄積したノウハウを、地域展開に生かすことに取り組み始めた。
形になったのは昨年度。塩尻、下諏訪、箕輪、麻績の4市町村と業務受託契約を締結した。本年度は安曇野市と高森町が新たに契約したほか、神奈川県でも厚木市のNPO法人と手を組み、隣の秦野市から委託を受けることになった。
支援の柱は、地域の実情に合わせた仕組みづくりと、専用ウェブサイトによる管理体制の構築だ。
仕組みづくりで大事にするのが調査。ヤマガネクストラボの津田敦也代表理事(59)は「足を使って実態を把握する」と言う。地元の強みを生かし、生徒・保護者や指導者、自治体職員の元を訪れて面談し、アンケートを行う。自治体への説明資料では「泥臭くPDCA(計画、実行、点検、見直し)を回す」とアピールする。
運営の仕組みをデジタル技術で一元管理できるようにするのもポイントだ。生徒はクラブの選択や申し込み、クラブは出欠や月謝の管理、自治体は全体の活動状況の把握など、必要な手続きをウェブサイトで済ますことができる。
それでも、山雅の役割はあくまで後方支援という。展開先としてサッカースクールなど山雅が運営する団体は入っていない。津田代表は「やりたいのは、地域クラブが自立して部活動の実施主体であり続けること」と話す。
では、山雅にとってのメリットは何か? 「受託で得た利益は、サッカー事業に投下する」と津田代表。トップチームの強化につながるとする。
「部活動は子どもたちに、スポーツや芸術への挑戦を促す環境をつくっている。その機能を残すことは、地域のためにも山雅のためにもなる」と、将来を見据えてもいるという。
【ヤマガネクストラボ】 今年4月、「一般社団法人松本山雅SC南信」が名称を変えて発足。SC南信が担ったサッカーの育成・普及事業はNPO法人松本山雅スポーツクラブに移管し、ネクストラボは社会課題の解決に注力する。