【信大講座新聞をつくろう2022】 松本市がバスの運賃で実証実験 QRコード活用し決済へ

MGプレスが信州大全学教育機構(松本市旭)で開く寄付講座「新聞をつくろう!」。本年度受講している1、2年生23人がグループ・個人で、それぞれ関心がある七つのテーマを取材した。学生たちの記事を順次掲載する。

松本市は4月から、市内の周遊バス「タウンスニーカー」の運賃支払いについて、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済の実証実験を行っている。重点戦略として進めるDX・デジタル化の一環だ。当初は今年12月までの予定だったが、2023年度まで延長し、利用者の利便性向上に向け課題などの検証を行うという。QRコードを活用した決済導入の狙いなどを取材した。

タウンスニーカー4路線で 4月から導入順調運用

「電話やメールでの問い合わせはあるが、今のところ大きなトラブルは発生しておらず、順調に運用できている」。松本市交通ネットワーク課課長補佐の三井康弘さん(47)は、タウンスニーカー運賃の「Ticket(チケット)QR」決済について、こう話す。
交通キャッシュレス化事業で実施しているチケットQRは、専用アプリを使ってQRコードを表示させ、専用に設置した読み取り機にかざして決済する方式。市内を巡回するタウンスニーカー4路線で、4月から実験的に導入している。同課によると、7月6日までに延べ1982件、381人が利用した。
この方式を導入したのは、初期費用や機器の保守など定期的にかかる費用が地域連携ICカードやEMVコンタクトレスに比べ安いほか、ODデータ(バスの乗車、降車位置データ)を集められるためだ。このデータを分析することで、分野を超えた政策展開につなげることができるという。
松本市より先にQRコードによる決済を導入している上田市は既に紙の回数券を廃止しており、QRコードのプリペイドカードのみとなっている。

ICカード導入都市は 費用面での負担が課題

チケットQRの決済方式は全国的にも珍しい。名古屋市は「manaca(マナカ)」を含む10種類の交通系ICカードの決済方式を2011年2月11日から導入している。金沢市は、市内を走る「フラットバス」の一部ルートで、04年12月からICカードによる決済ができるようにした。しかし、両市とも、QRコードを使った決済方式は導入していない。
ICカード導入のメリットは、両替やお釣りの受け取り、定期券の日付確認が不要となり乗車時間が短縮されたことや、定期券の紛失時などに再発行が行えるようになったことが挙げられる。しかし、「導入時の初期費用が高額で機器の保守にも多額の費用がかかるデメリットがある」(松本市交通ネットワーク課)という。

23年度まで延長 より多くのデータを

松本市の実証実験は今年12月までの予定を、23年度まで延長する。本格運用に向け「(実験の)期間をある程度長く取ることで、より多くのデータを集め、評価や課題などの検証を行いたい」(三井さん)としている。
今後はキャッシュレス化を前提とした料金体系、他分野の施策との連携についても検討していく。現在、実証実験を行っている決済装置の設置費用は事業者が負担しているが、本格導入後は市が適正な価格で買い取り、事業者に無償貸与する予定だ。

松本市は30年度までの基本構想で「人」を中心としたまちづくりの在りかたを考え、三ガク(岳・学・楽)都に象徴される松本らしさを「シンカ」(進化・深化)させることを基本理念に据え、施策に取り組む。
施策は、福祉や観光を含む7分野に分かれており「特に若者・子ども・教育分野に力を入れて取り組んでいる」と市総合戦略室次長の藤井昌浩さん=写真=は言う。これらを推し進める上での重点戦略を設けており、その中にDX・デジタル化がある。バス運賃のキャッシュレス化は、私たちの生活の身近なところでも進むDX・デジタル化の一つだ。

【メモ】 DX(デジタルトランスフォーメーション)デジタル技術を用いて、業務の効率を上げたり、生活の形が変わることを指す。松本市のみならず、少子高齢化の影響で全国的に人口が減少している。それに伴い、働ける人の数も減少する中で、DXやデジタル化によってそれをカバーする役割が期待される。

取材を終えて

瀧澤優紀(経法学部) 取材を通して松本市の総合政策について知ることができた。重点戦略の一つとしてDX化がある。松本市内を巡回するタウンスニーカーで行われているチケットQR決済の実証実験など具体例についても触れることができ有意義だった。
星山訓輝(経法学部) 今回、新聞の記事を作成するに当たって、学べたことはたくさんある。特に私たちの見えないところで行政の方が日々努力していることを知り、非常に勉強になった。私も、誰にも見られていないところで努力したいと思った。