【信大講座新聞をつくろう2022】 コロナ禍をどう乗り越える?

新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまなイベントが中止になったり、店舗が営業を制限されたりした。どんな影響を受け、どう乗り越えていくのか。松本を代表するイベント「松本ぼんぼん」と、街の小さな猫カフェ。二つの事例を取材した。

松本ぼんぼん 開催することに意味

来月6日、松本ぼんぼんが3年ぶりに開かれる。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参加者数を2万人から5000人に減らしたり、踊り時間を短縮したり、以前よりにぎやかさは抑えられる。
「今年はまず開催することが重要。踊りの伝統をつなげ、再び人と人とをつなぐきっかけになればいいと思う」。運営に携わる松本商工会議所の地域振興グループ長、谷崎幸一郎さんはそう語る。
「つながり」は、ぼんぼんの起源から大切にされてきたことだ。
第1回は1975(昭和50)年。当時、全国各地で夏祭りが盛んに開催されており、松本でも「商店街へ買い物に来てくださるお得意さんに何かサービスできないか」と、機運が盛り上がった。
中心商店街を歩行者天国で開放し、不特定多数の人たちと交流することが計画された。踊りは一からつくられた。昔ながらの盆踊りとは違い、軽快なリズムと明るい踊り。批判もあったが、やがて受け入れられた。
実現には、商店街だけでなく、地域住民との協力が欠かせなかった。地域の人々とのつながりを大切にし、それを市民たちに広げて、夏の夜をともに楽しむ。祭りは、松本の夏のイベントとして定着した。
それがコロナ禍で中断した。そもそも日常生活でも人と人とが交わる機会が減った。「コロナ禍で人と人とのつながりが薄れてしまった」と谷崎さんは言う。つながりは、ぼんぼんのベースであり、役割でもある。開催が、人と人とがつながり直す機会になる。
コロナ禍が収まりきっていない中、時期尚早との声もあったという。感染対策はさまざま工夫した。踊りの参加者数や時間を減らすほか、隊列の間隔を広げることもする。出店はあるが、歩きながらの飲食は自粛を求める。会場にごみ箱は設置されず、ごみ袋の持参が勧められている。
参加者にも徹底した感染対策を求め、さまざまなつながりを取り戻す祭りを目指す。

「ねこカフェもふもふ」安全な触れ合い優先

松本市双葉の「ねこカフェもふもふ」は、2015年に保護猫のために開業した。
コロナ以前は、猫と触れ合いつつ、飲み物などを口にしながらリラックスした時間を過ごせた。しかし今は、飲食の提供はない。「感染症対策や人件費を削減するためにやめた」と、スタッフの竹内満美子さん。猫と安全に触れ合えることを優先している。
コロナ禍の影響を受けたのは、飲食だけではない。保護猫を助ける活動も不自由を強いられている。
もふもふは、保健所から殺処分前の猫を引き取り、不妊手術や病気治療を施した後、新たな飼い主への譲渡を行う場も担っている。コロナで保護猫を引き取ってくれる人数は変わっていないが、カフェや譲渡会が通常通り開けず、保護猫を知ってもらう機会は減ったそうだ。
保護が必要な猫は増えている。近年、猫が繁殖し過ぎてしまい飼い主が手に負えなくなる「多頭飼育崩壊」が多く発生している。もふもふでは、そういった猫の一部を引き取り、シェルターで保護する。だが、受け入れられる猫の数には限りがある。「数年後に多くの猫を助けるために行動するのではなく、目の前の子を助けたい。けれども、助けるための資金に余裕はあまりない」という。
クラウドファンディングや寄付で補っている。だが、インターネット上で宣伝をしたくても、人材が足りておらず、店を訪れる人も減っている。これも、コロナの影響を受けている面だ。
今後にどんな見通しを持っているのか。「完全に元に戻すのは難しい。例えば、飲食なら別の店舗をつくって、猫との触れ合いの場を分けるなど、続けるために、いろんな方法を模索している」と竹内さんは話した。

取材を終えて

竹之内桃花(教育学部) 保護猫について、現場を取材することでリアルな状況を知ることができた。自分のイメージよりも、コロナは保護猫に広く影響していることが分かった。自分は猫好きなので、今後も保護猫の事情について知り、できる支援をしていきたい。
古畑杏(あず)(経法学部) 取材で聞いたことのすべてを記事にすることは不可能で、取捨選択をし、限られた文字数の中で伝えたいことを書き上げるのが非常に難しかった。自分が興味を持ったことを取材し、それを元に記事として書き上げることの大変さを身をもって体感した。
山崎美穂(工学部) 今回取材した2件はどちらも人の数を減らしたり一人一人に感染対策を徹底させたりするなど、さまざまな努力をしていた。感染状況は依然として厳しいが、これらの努力が実を結び、少しずつ日常を取り戻していけることを切に願う。