大町市出身の俳優、渡辺邦斗さん(40)は昨年、高視聴率テレビドラマ「VIVANT(ヴィヴァン)」(TBS系)、人気漫画の実写版映画「キングダム 運命の炎」と「沈黙の艦隊」など話題作に相次いで出演した。秋には信濃大町観光大使を委嘱されたり、長年続ける写真の腕を生かして同市の人や風景などが題材の写真展を市内で開いたりと、地元に関わる活動も展開。今年もマルチな活躍ぶりに注目だ。
近作で自身が印象に残る役として、「VIVANT」の河合幸二役を挙げた渡辺さん。主演の堺雅人さん演じる乃木憂助に詰め寄り早口でまくし立てる慇(いん)懃(ぎん)無礼で癖のある役どころを好演した。
監督を務めた福澤克雄さんの作品に出演するのが一つの目標だったと言い、「とにかくいやらしさマックスで、インパクトのある役に」との監督の要望に応えるため、長ぜりふを頭にたたき込み、感覚でしゃべれるぐらいにして本番に臨んだという。
河合役を演じ、ある気付きがあった。「せりふの回転数(速度)を上げてしゃべるのは意外に得意なのかもしれない」。後日、検事役で出演したドラマ「ハイエナ」(テレ東系)の裁判シーンにも応用でき、「一つの武器にしていけたら」。
近く公開される作品では、映画「沈黙の艦隊」続編の連続ドラマ(2月9日配信開始)にも出演している。「ベクトル(方向)を絞らず、シリアスな役からコミカルな役までカバーできる俳優が目標です」。
少年時代、地元の方言で言えば「がった(元気のいい、いたずらっ子)」だった。戦隊ヒーロー番組の影響で自宅で掃除機の柄を振り回し遊ぶのを見かねた親の勧めで、剣道を小学2年生から始めた。
「もうちょっと広い世界を見たい」と、中学卒業直後にカナダ・モントリオールの高校へ留学。現地に滞在中、石原プロモーション(当時)の新人発掘オーディション「21世紀の石原裕次郎を探せ!」で準グランプリに輝き、2004年、スペシャルドラマ「弟」(テレビ朝日系)の石原慎太郎役で俳優デビューを飾った。
新たに加わった信濃大町観光大使としての活動について、「表現者として、表現の魅力をいろんな世代の皆さんに伝えていけたら」と意欲的。写真展は、故郷の良さの再発見や子どもたちへのエールを込めた作品を展示した。切り抜いた一瞬の前後が伝わる写真にこだわり、「演じる役柄の人生は続いていて、映る場面には役柄の人生をどれだけ盛り込めるかをいつも課題にしている」と俳優業との共通点を口にする。
今年はさらに自身を育んでくれた故郷に貢献したい考えで、「俳優業で蓄えたエネルギーを、より地元に還元できるように取り組んでいきたい」と抱負を話す。
【プロフィル】
わたなべ・くにと 大町市出身。1983(昭和58)年生まれ。2004年のスペシャルドラマ「弟」(テレビ朝日系)で俳優人生をスタートさせ、NHKの連続テレビ小説や大河ドラマの他、映画や舞台などにも出演する。「ウルトラマンジード」(テレ東系)の伏井出ケイ役などでも知られる。