持続する地域医療 関心高く 長野県オンライン診療研究会 塩尻の医師・薬剤師らが立ち上げ

医師と患者が離れた所にいても診察できるオンライン診療を巡り、情報共有の場をつくろうと、塩尻市の医師や薬剤師らが任意団体「長野県オンライン診療研究会」を立ち上げた。4月末に初の講演会イベントを開くと、県内各地の自治体や医療機関の関係者から予想を超える数の参加があった。
研究会は今年1月、「ときのクリニック」(広丘原新田)の今井紳一郎院長(41)を会長に発足した。今井さんはかねて、中山間地やへき地でオンラインを活用できないかと情報を集めていた。
同様の問題意識を持っていたのが県内で「松本調剤薬局」などを運営するFMI(広丘吉田)の代表で、薬剤師の岩下誠さん(42)。「診察から薬のことまで新しい医療の価値を提供したい」と副会長に加わった。
ほかに県ディープラーニング協会(同)の百瀬剛代表理事が、運営アドバイザー役として副会長に就いた。
コロナ禍で脚光を浴びたオンライン診療だが、患者だけでなく医療者にとってもまだなじみが薄い。設備や人員を整えるのにかかるコスト、行政手続きなど分からないことが多いという。
情報共有の機会として第1回のイベントを4月30日、塩尻市市民交流センター「えんぱーく」で開いた。
最初に今井さんが登壇。自身のクリニックで行っているオンライン診療について患者の受け付けから診察、支払いまでの流れを紹介。診療報酬が低めであることにも触れつつ「長野は山間部が多い。限りある医療資源を分配し、持続する地域医療を実現しなければ」と、オンライン診療を活用する意義を強調した。
続いて売木村診療所とオンラインでつないだ。2年前、無医村になる危機からオンライン診療を導入した経緯を現地から説明した。
現在は週1回、県立阿南病院(阿南町)にいる医師が診療所の患者とパソコンを通して診察しているという。患者のそばでサポートする看護師は「特に困ったことはない」と報告した。
最後に、長岡技術科学大(新潟県長岡市)の勝木将人准教授が片頭痛の専門外来オンラインについて語った。
会場で約20人が聴いたほか、約60人はオンラインで参加。合計80人超のうち病院関係者が4割以上を占め、4分の1は自治体関係者だった。当初予想は10~20人だったといい、今井さんも驚く反響の大きさで、関心の高さがはっきりした。
今井さんは「オンラインという新しい選択肢を提案したい」と意気込み、当面は、自らも県内外の実践例を視察し、情報交換のイベントを年2回ほど開く。次回は秋に開催予定。問い合わせは研究会ホームページ=https://naganotelemed.jimdosite.com/=まで。