はかま姿にげた信州の山楽しむ 松本の西山さん

山の美しさと着物文化を発信

はかま姿にげた履きの男性が、県内の山々に出没し登山をしているとの情報を聞いた。
一風変わった山登りを楽しむその人は「浴衣山人にしやん」こと、西山義明さん(40、松本市)。「北アルプスに引かれてやってきた」と、今年3月に福岡県から松本市に移住。市の職員として働いている。
登山歴は4年目。健康のために始めて、どっぷりとはまった。「便利な道具やウエアに頼りたくない、自分の実力で登りたい」と、このスタイルでの登山を始めて1年。登山者らの注目を集める。「山の美しさと共に、日本の伝統的な着物文化も盛り上げたい」と期待を込める。
山に囲まれた信州での暮らしは「とても幸せ、毎日充実している」と今日も山へ向かう。

福岡から移住市職員の顔も

「はかまで登山?」。足は傷めないのか、体温調節はどうしているのか─と、とても気になる。登山が趣味の記者が、西山さんの山行に同行させてもらった。4月下旬、いざ美ケ原へ。うわさ通り、はかまにげた姿で登場した西山さん。なんと私服もこのスタイルらしい。扇子やげた、傘は、職人が手がけた物にこだわる。げたには特注で滑り止めを付けてもらったという。
登り始めると、記者の心配をよそにスイスイと登っていく。むしろ追い付けずスピードを緩めてもらったほど。足に意識を集中し、置く場所や向き、抜き方などを判断しながら歩く。汗の量は歩くスピードや上着の脱ぎ着で調整する。
珍しい格好に、擦れ違う登山者も気になるようで、「かっこいいね」「こんな格好でなぜ登ってるの?」と、何人もの登山者に声をかけられた。「山好き、飯好き、人好き」を自認する西山さんにとっては、山での景色、下山後のご飯はもちろん、人との会話も楽しみの一つなのだ。

人の温かさと山に癒やされ

西山さんは今年3月、福岡県から松本市に移住。福岡県では県職員、現在は松本市職員として働いている。
登山を始めたのは2021年。きっかけは健康診断だ。食べることが大好きだが、体脂肪やコレステロールの数値が気になった。「運動してみよう」と、幼少期によく遊んでいた地元の山に登ってみると、ゼエゼエハアハア。思いの外苦しく「すごく悔しかった」。
負けず嫌いの西山さんは翌日も登山に挑戦。天気が良い日で「今まで見たことのない景色に感動を覚えた」。それからどっぷり山にはまり、九州の山々を毎週のように登った。山に癒やされ、気になる数値も良くなり、心身共にプラスの効果が見えてきた。
車中泊をしながら全国各地の最高峰に挑戦し、これまでに登頂した山は248座。信州の山もよく訪れた。「いろいろな県のたくさんの山に登ったが、来るたびに温かい」と、山の素晴らしさと人の温かさが松本移住の決め手となった。「かっこいい北アルプスを身近に感じられる生活が幸せ」。移住生活の充実感が伝わる。
自分の実力を試すはかま・げたスタイルで、燕岳や焼岳の登頂に成功した。「今年は槍ケ岳に挑戦したい」と意気込む。
登山の様子はネットにもアップしている。「浴衣山人にしやん」で検索。