【ビジネスの明日】#61 岩岳リゾート社長 星野裕二さん

「白馬の眺望」夏の誘客に成果

「この絶景の中で仕事ができるだけでも幸せを感じます」。こう語るのはスキー場・白馬岩岳スノーフィールドを運営する岩岳リゾート(白馬村北城)の星野裕二社長(58)だ。スキー人口が減少する中、グリーンシーズンの誘客で会社をもり立てる。その成功を支えるのが、自らほれ込む「白馬の眺望」という。
同スキー場の山頂にあるカフェなどが入る「白馬マウンテンハーバー」。ここのテラスからは眼前に白馬三山がそびえるなど、180度の北アルプスの大パノラマが望める。振り返って東側を見れば、白馬村の全景が広がる。
「昨年、フランスなどのスキー場を視察し、岩岳に帰ってきてまず感じたのは、『ここの眺望は負けていない』だった」と振り返る。同社の全従業員が共有しているという社の目標「世界に通用するオールシーズンマウンテンリゾート」の実現に向け、手応えを感じているようだ。
2015~16年シーズンの記録的な少雪で大打撃を受け、「スノーシーズンだけでは経営は成り立たない」と判断。16年、自転車のMTBコースを復活させたのを皮切りに、18年に白馬マウンテンハーバーをオープン。
20年には全国的にも話題になった山に向かって飛び出すような大型ブランコ「ヤッホー!スウィング」を設置。コロナ禍に突入した時期だったにもかかわらず「密」を避けられるアウトドア効果もあり、「5時間待ち」になるほどの人気に。
その後も新たなカフェスペースや「ヤッホー」より大規模なブランコを設置するなど積極投資。その結果、グリーンシーズンの来場者数は、7、8年前は約2万人だったが、現在は約22万人と急増。約15万人というスノーシーズンを人数で逆転した。
「スキー場でグリーンシーズンの誘客にこれだけ成功した例は、全国的にも珍しいのでは」と胸を張る。
一方、「スキー場としてのプライドは忘れない」とし、スノーシーズンの充実にも力を入れる。現在、メインの輸送施設となる「ゴンドラリフト」を新設中で、今年12月に完成予定。今稼働している6人乗りが10人乗りになり、輸送能力は2倍近くになる。
また、スキーなどをしない「ノンスキーヤー」をゲレンデに呼び込むための、新たなアクティビティーの提供を積極的に行う。
「冬は冬、夏は夏と、それぞれに投資し、年間来場者数を50万人にするのが直近の目標」と力を込める。

ほしの・ゆうじ1966年、松本市出身。松本深志高校卒業後、上京。約10年間、飲食店などで働く。28歳の時に大町市でスキー用品のレンタル会社を起業。2016年、日本スキー場開発(白馬村)入社。鹿島槍スキー場の社長などを歴任し、23年から現職。大町市在住。