塩尻市出身 ポップデュオ「sucola」ボーカルの春奈さん 帰郷し新たな環境で楽曲制作

中国ツアー成功 次なる一歩は

名古屋発のポップデュオ「sucola(スコラ)」のボーカル、春奈(本名・林春奈)さん(26)は塩尻市出身。楽曲は主に中国の音楽配信サイトでヒットし、昨年11月に上海など中国の4都市を回るツアーを成功させた。国内でも耳の早いリスナーに注目される存在になる一方、現在は帰郷して自身の音楽性や可能性を膨らませている。

「日常から2ミリ浮く」音楽性

今月5日にリリースしたEPは、「話すのが苦手」という春奈さんが「心の説明できない動きを歌詞にした」というタイトルチューン「機微」など全5曲を収録した。
sucolaは作詞を春奈さん、マスタリングをyopecoさん(38、名古屋市)、作曲は二人で担当。パソコンで作曲する「デスクトップミュージック(DTM)」が基本で、どこか懐かしいサウンドに乗せ、春奈さんが淡くアンニュイな声で歌う。そのルーツは洋楽、ブラックミュージック、ジャズ、昭和歌謡など多岐にわたるという。
「混沌とした日常から2ミリ浮いたような、逃避行をしているような、そんな非現実的な体験」(春奈さん)と語る独自の音楽性と、一度聞くと、ふとした時に頭の中で曲が流れる“やみつき”な感じが魅力。一昨年は松本市で毎秋開く野外音楽フェスティバル「りんご音楽祭」に出演した。

SNS投稿きっかけで結成

音楽が好きで、大学生の頃に自身が歌う姿を何げなくSNSに投稿した春奈さん。その動画をyopekoさんに見いだされ、2019年にデュオを結成して音楽活動を始めた。
「地元みたいな場所にわざわざ行くようになったな、、」「地元みたいな田舎は嫌い『だった』になったわ」と歌う「日本ロマンチック街道」(2022年)は、地方での生活を退屈に感じ、もんもんとしていた10代の春奈さんが、大学進学で古里を離れ、その温かさに気づいたことを素直な言葉で表現。地方から都会へ出た同世代の共感を呼んだ。

雅楽の習得に喫茶店勤務も

家業が神職の春奈さんは、自身も神主の資格を持ち、現在は実家に戻り雅楽を学んでいる。一方で学生時代を過ごした名古屋で、人々が身を寄せ合うレトロな喫茶店に魅了されたこともあり、松本市内の店でアルバイトもしている。
ネット配信での活動が主だったsucolaが、中国ツアーでリスナーの熱量を直接感じたことで、「より一層、人のために届けたいという気持ちになった」と春奈さん。これから生み出される曲は、古里で抱いた気持ちを落とし込んだものになるはずだ。音楽性の変化が気になると同時に、その多彩な活動からも目が離せない。