20歳のみなもと琴さん詩集刊行 「誰かを救うきっかけに」

生きづらさ乗り越え作家の道へ

マイナスの感情や理不尽さを、表現活動に昇華するのが唯一の生きる道だった─。塩尻市広丘野村のみなもと琴(本名・瀧澤聖音(せいね))さん(20)が、詩集「少女的備忘録」を刊行した。中学生の時にいじめに遭い、起立性調節障害を発症した経験がある自身や、友人ら生きづらさを抱える人をモデルにし、16~19歳につづった35編を収録した。
手のひらサイズの138ページ。淡い夢や希望が遠い場所へ行ってしまう絶望感や、何も信じられない世界で自分らしくあろうとする姿が、鋭い感性と言葉で表現されている。
つらい現実から目をそらすため読書に没頭し、小説も書き始めた。松本深志高校では文学部に所属し、高校生の文芸コンクールに詩を出品し、2年生の時に最優秀賞を受けた。作家になる夢が芽生え、雑誌などの公募展に応募し何度か掲載されたが、批評に心が折れスランプに。2年間、作家を目指す意味が見いだせず悩んだ。
しかし、旅先で偶然手にした詩集の作者と話ができたり、詩について語り合う友人ができたりし、昨年、その友人から「詩は自分が言語化できないことを代弁してくれ、心が救われる」と聞いた。「自分も今まで作品に助けられてきた。今度は自分が助ける側になりたい」。改めて作家の道を歩む決意をし、これまでの作品を編んで刊行することにした。
現在は心身共に安定し、地元の旅館で働きながら、創作活動を続ける。自身の成長の記録にもなった詩集を「興味がない人にも読んでもらい、その人が見えていなかった何かが見えるようになり、誰かを救うきっかけにもなれば」という。
100冊を刊行。2800円。松本市城東1の古書店「books電線の鳥」や、みなもとさんのXから購入できる。問い合わせはXのダイレクトメッセージで。