“もったいないレストラン”廃棄野菜をおいしく

1次産業で地域盛り上げたい

もったいないレストランオープン!出荷できずに捨てられる野菜や、花や茎などあまり使われない部分を生かした料理を出す「matai(マータイ)」(松本市桐3)。週1日、ランチの時間だけ開かれる。珍しい野菜などを作る団体「信州ゆめクジラ農園」の運営会社「日本レストラン野菜生産者組合」(松本市浅間温泉3)社長、古田俊(すぐる)さん(46)が手がける。
生産者と触れ合う中、規格外や傷などの理由で捨てられる野菜を目の当たりにした。「こうした野菜をおいしく食べられる場所があれば、状況が変わるのでは」。昼間営業してない飲食店を借り、レストランを開いた。
スパゲティを中心としたコース料理で、材料はねぎ坊主、カブの葉、カブの花など。どんな料理になるのだろう─。

規格外の野菜も通常価格で購入

5月のある木曜日。レストラン「matai」では、「ニンジンのカルボナーラ」「松本一本ねぎの冷製ポタージュ」「苺(いちご)とルバーブ、ヨーグルトを使ったゼリー」などの料理を提供した。おしゃれでおいしく、捨てられる野菜などを使っているとは思えないが…。
ねぎ坊主が出てしまった松本一本ねぎの苗、冬越しをして硬くなったニンジン、小さく、形が悪いイチゴなどを使ったという。「買いたたく」「無料で引き取る」といったことはせず、「信州ゆめクジラ農園」の通常の価格で買い取った。
「信州─」を運営する「日本レストラン野菜生産者組合」の古田俊さんは、生産者が手間暇かけて育てる野菜が、出荷できないという理由で捨てられるのを見て、「もったいないな」と感じていた。同時に、「フードロスをなくそう」「食糧難を見越して昆虫食を」という方向だけに進むことにも、疑問があった。その前にできることがあるのではないか|。
「出荷ができてもできなくても、使う肥料は変わらない。カブの葉など捨てられる物も販売できれば、生産者の収入アップになる」。古田さんは以前、飲食店に携わっていた経験があり、“もったいないレストラン”をできる範囲でやってみることにした。
ネパール人の友人が営む店「ピープルカンパイ酒場」(桐3)は昼間空いているので、使うことに。ソースの味付けは、東京や松本の飲食店のシェフにアドバイスをもらいながら完成させた。4月末、「matai」を開いた。
メニューは置かず、その日ある野菜などを使った2千円のコース(サラダ、スープ、スパゲティ、デザート)だけを提供する。上限は1日20食。「注文が入らず、捨てることになったら本末転倒だから」と古田さん。化学調味料は使わない。

捨てられる物に関心持つ機会を

「matai」は、「MOTTAINAI」を提唱し、環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさん(ケニア出身)にちなむ。スペルは「Maathai」だが、日本人に分かりやすく今の表記にしたという。
「値下げ競争や廃棄など、苦労して作っても値段に反映されないことが、農業後継者が不足する大きな原因だと思う」と古田さん。レストランで食べ方を提案することで「捨てられる物、使わない物に関心を持ってもらえたら」とする。
「1次産業で地域を盛り上げ、元気にしたい」。古田さんの一番の根っこだ。「matai」だけでなく、さまざまな方法を模索中という。
「matai」は毎週木曜午前11時半~午後3時。古田さんTEL080・5187・7365。予約はインスタグラム=こちら=でも。