祖父母のブドウ畑継ぐ Uターン夫婦の「くぼたこ農園」

「祖父母のように、いつまでも元気でいたい」「おいしいデラウェアを作り続けたい」―。東京から松本にUターンした窪田孝子さん(28)と、夫の宗さん(31)は今年、孝子さんの祖父母が営んできた同市里山辺のブドウ畑を本格的に引き継いだ。「くぼたこ農園」と名乗り、作業に励んでいる。

祖父母の作業姿自分の将来重ね

大和照夫さん(92)、為子さん(86)夫妻が、45年近く続けてきたブドウ畑は10アール。品種はデラウェアが9割を占め、ほかにナイアガラとスチューベン、シャインマスカットがある。
孝子さんは東京で保育士、宗さんは会社員として働いていた。2年前の夏、実家に帰省した際、ブドウ栽培に携わっていない父母を交え、高齢の祖父母の畑を今後どうするかの話し合いが持たれた。「私がやりたい」と孝子さんが手を挙げた。
農業の経験はなかったが、都内のスーパーに並ぶ果物に比べ、地元産のほうがおいしいと感じたり、祖父母が主に作るデラウェアを見かけることが少なかったりしたため、「おいしいデラを作り続けたい。大勢に食べてほしい」と強く思ったという。
暑い日も寒い日も畑に出て作業している健康な祖父母に、将来のあるべき自分の姿も重ねた。宗さんに「ブドウをやらない?」と聞いたところ、二つ返事で「やる」。山梨県出身の宗さんは、巨峰やモモを作る祖父母を手伝ったことがあり、漠然と「将来は農家をやってみたい」と考えていた故の即決だった。

SNSや直売 食育も視野に

孝子さんは昨年から、宗さんは今年4月から、大和さん夫妻にブドウ作りを教わっている。「想像していたより、ずっと大変だった」と二人。それでも宗さんは「(妻と)一緒に歌ったり、話したりしながらの作業は、とても楽しい」。
ブドウはJAに卸すほか、新たにSNS(交流サイト)やフリーマーケットアプリで、規格外品を含む直売も始めた。将来は、地域の子どもたちに収穫を体験させるなどし、食育に携わることも視野に入れている。
照夫さんは「畑をどうするか悩んでいたので(孫夫婦が引き継いでくれて)うれしい。教えられることはすべて教え、後は任せたい」と話す。
ブドウは8月から収穫する予定。成長の様子などは、 = インスタグラム=で発信している。