【記者兼農家のUターンto農】#122 生分解マルチ

農家にも環境にも優しい

10月上旬、うちでは今年のリーフレタスの出荷が終わった。畑には一面、白いマルチシートが残った。
マルチ、つまり薄いポリエチレンのフィルムは、雑草や病原菌の活動を抑え、泥はねを防ぎ、土壌の保湿や保温にもなる。実にありがたい存在だが、敷きっぱなしはできない。来年に向けた土作りで緑肥を育てたり堆肥をまいたりするため、役割を終えたら速やかに退場してもらうことになる。
この作業が、単純ながらなかなかの重労働だ。幅2メートルほどのマルチを引き剥がしながら畑を何往復も歩く。マルチには重しとして土が載っている。乾いた土は、ほこりっぽい。湿っていると、重い。
剥いだマルチを丸くまとめるのも力仕事。涼しくなって、夏場ほど消耗しないのはありがたい。
まとめたマルチは、農協の共同廃棄所に運び込む。後は委託業者が環境基準に沿って処分するが、その費用は農家側で負担する。
使用済みマルチは体力もお金もかかる無用の長物。放っておければどれだけいいか。
手はある。「生分解マルチ」の導入だ。
このマルチ、土中にすき込むと、微生物の働きで水と二酸化炭素に分解される。農家は大助かり。廃プラスチックが出ないので、地球も喜ぶだろう。
問題は価格だ。ポリマルチの3倍ほどで、簡単には手が出ない。
それでも潮流はできつつある。JA全農の供給した生分解マルチが、昨年度は過去最高だったと先月の日本農業新聞が報じた。しかも4年で倍というハイペース。さらに供給量が増え、手頃な価格に下がる数年後を想像したくなる。
しかし、一筋縄ではいかない。「今年は去年より逆に売れなかった」と言うのは、レタス類の一大産地、洗馬農協の担当者だ。農業資材全体が高くなり、コストカットのあおりを食った。生分解マルチ自体も2割ほど上がったという。「剥ぎ取りの手間はなくなるし、環境にも優しいから普及を進めたいんだけど」
生産現場でも社会でも求められている。反落を期待したい。