松本山雅FCのホーム試合でサンプロアルウィンに出店する「喫茶山雅」に、繰り返し使える「リユース(再利用)カップ」が登場した。プラスチックごみの削減に取り組む松本市が、リユース食器の補助金を創設したのを機に導入した。障害者の就労支援施設との共同事業だ。
松本市「プラごみ削減」事業の先陣
9月24日のFC岐阜戦。スタジアムのコンコースにある喫茶山雅の店先で、飲料を注文した客一人一人に、何やら説明するスタッフの姿があった。
手にしているのは、半透明のリユースカップ。普通の透明なプラスチックカップより厚手で、ポリプロピレン製。洗って何度でも使える。
同店が全面的に導入し、この日が初お目見え。事前に山雅の公式ホームページなどで告知したが、現場でも客に丁寧に説明することにした。同時に、スタジアム内に設けた回収場所も伝えた。
「7、8割の人は導入を知らなかった」と、説明に当たった店舗マネジャーの阿部琢久哉さん(38)。それでも「いい取り組みだ」という反応が多かったという。プラごみの削減という趣旨への手応えは、しっかり得られた。
山雅はこれまで、費用や衛生面などがネックで、リユースカップに二の足を踏んでいたという。この秋、松本市が補助制度を設け、カップの洗浄や管理についても市が業者と委託契約を結んだことで、導入に踏み切った。
ただ好反応の一方で、「山雅のエンブレム付きのカップで飲みたい」という客の声も、複数あったという。コスト面で、使い捨てプラカップよりだいぶ割高という課題も残る。
山雅は課題を検討しながらリユースカップの使用を続け、来季以降、サンアル内の他の店舗でも導入するよう働きかける考えだ。
就労支援施設が洗浄など請け負う
松本市は、1日1人当たりのごみ排出量が県内19市で最多。2021年から「ワンウェイ(使い捨て)プラスチック削減ミッション」と銘打つ施策に取り組み、リユース食器の促進はその一環だ。
山雅の試合は、市内で開かれるイベントでは屈指の規模。市民や他の事業者への影響力も考え、サンアルでの導入を後押しした。
カップの管理や洗浄は、就労継続支援A型事業所「エア・ウォーター・スマイル」(梓川倭)が請け負う。これまでのラベル貼りや洗濯といった事業から幅を広げ、環境活動にも参画したいと、市の公募に手を挙げた。
イベントに関わるのは、普段と違う活動になる。管理者の織田弥生さん(52)は「カップの運搬を担当した利用者は、サンアルの雰囲気にわくわくしていた。労働意欲にもつながる」と見る。
リユースカップは、9月23、24日に市内で開かれた野外音楽フェスティバル「りんご音楽祭」でも貸し出された。今後、学校文化祭などのイベントで利用を広げたいという。