塩尻の内科医院 待ち時間ゼロで煩わしさ解消

塩尻市広丘原新田の内科医院「ときのクリニック」は、待ち時間ゼロがコンセプトだ。予約が基本で、行けばすぐに診てもらえるため、待合室で長時間待つ覚悟は無用。オンライン診療も選べるなど忙しい現役世代の煩わしさを解消する処方が特長だ。
開業は2022年12月。名前は「時」にちなむ。「時間的な価値を提供したい」という、今井紳一郎院長(41)の思いが込められている。
1、2時間待たせ、診るのは2、3分。ともすれば、そんな診療になりがちな仕組みに疑問があったという。「全面予約制クリニック」開業に至った理由だ。
1人30分の枠を設け、予約を受け付ける。もし予約なしの患者が来院しても、予約診療が優先される。
予約はLINE(ライン)か医療系アプリから。デジタル機器に慣れない人には高いハードルを課してしまうことになるが、それは承知の上。忙しい現役世代に時間の価値を届けたいからだ。デジタル予約は24時間受け付けられる。
オンライン診療をするのも時間効率を考えてのこと。現役世代が時間を割けるように平日午後8時まで開き、土日曜も定期的に診る。
こうした受診方法の選択肢を示したうえで今井院長は、「こんなクリニックがあってもいい。どれがいいのか、患者さんに選んでもらえれば」と言う。
中信地区に住む20代の会社員男性は、別の医療機関で睡眠導入剤の処方を受けていたが、「待ち時間がばかにならなかった。土日は行けないし、何とかしたかった」。そう思っていた時に、ときのクリニックを知って受診。「時間に縛られないし、診察代もリーズナブルだった」と気に入り、月1回、会社帰りに通うようになった。
開業から1年余り。「やはり若い患者さんが多いが、想定以上でもある」と驚く今井院長。患者には10代、さらには小学生もいる。学校や習い事、あるいは保護者の仕事が終わった後に来るのに都合がいいようだ。意外なニーズが分かった。また、オンライン診療では、遠くは山口県とつなぐ人もいるという。
今井院長は、以前は地域の中核病院で外科医として勤務していた。家族を二の次にするような激務をこなしていたが、数年前、違う働き方を模索し始めた。「勤務医をしながら開業医ができないか」。病院では非常勤の外科医になって、開業することを考えついた。
「二刀流」のため、開業医になるのは週の半分ほど。短い診療時間で経営を成り立たせるため、内科医院とし、大型設備は入れなかった。常勤スタッフはほぼゼロで、受付から精算まで、院長自らこなせる体制にした。
デジタル技術を活用するのは、今井院長自身が時間の価値を享受するためでもある。「時の余白を生かして今までにない医療を提供したい」と話す。
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