夫婦で「日本百名山」40年余りで

安曇野市豊科の中村幸雄さん(73)、節子さん(68)夫妻は8月31日、南アルプスの光(てかり)岳(2592メートル)に登り、「日本百名山」の全山登頂を達成した。足かけ約40年。踏破まで残り2山となったところでコロナ禍になり、3年間登山を自粛。その間、気持ちを切らさず、体力維持にも努め、ついに念願を果たした。
互いに若い頃から登山が好きで、子宝に恵まれてからも、子どもを誘って、一緒に近くの里山のほか、北アルプスや富士山などあちこちの山を登った。
百名山を意識したのは12年ほど前。親の介護を終えたことなどもあり、ふとこれまでの登山歴を振り返ったとき、すでに百名山を60山ほど登っていることに気付いた。
「二人で100山、登ろうか」
目標ができると生活に張りが出た。畑仕事で体力維持に努め、事故やけがもなく順調に登頂を果たしたが、残り2山の最終盤に最大の困難が待っていた。2020年からのコロナ禍だ。
「この年齢になると、年々、目に見えて体力が落ちていく。焦った」と幸雄さん。
残る山は北海道・日高山脈の最高峰、幌尻(ぽろしり)岳(2052メートル)と南ア最南端の光岳。いずれも体力を要する困難な山だ。しかし気持ちを切らさず、昨年、夫婦で地元のトレーニングジムに毎日のように通い始めるなど、来たるべき挑戦再開に備えた。そして今年7月下旬、実に4年ぶりの登山で、まずは幌尻岳の登頂を果たした。
そして最後の光岳。この日は天気にも恵まれ、ついに百名山を完登。夜は夫妻への「ご褒美」で、1年で最も月が大きく見える「スーパームーン」と富士山の共演を眺めることができた。「山ならではの素晴らしい景色があるから、やめられない」と節子さん。
光岳の山小屋では夕食後、中村さん夫妻の二人三脚の快挙を宿泊客から聞いた管理人が、セレモニーを急きょ企画。ざるで作った手作りのくす玉を割り、みんなで喜びを分かち合った。
また、その日の宿泊客の中には、山で友人を亡くした人もいて、寄せられる祝福や感激の声に、夫妻は改めて、今まで無事に登ってこられたことのありがたさを思い、神に感謝したという。
今後について、幸雄さんは「百名山という“縛り”がなくなり、これからは山登りがもっと自由になりそう」と笑顔。「観光も織り交ぜたい。今までは北海道へ行ってもコンビニ食だったからね」
100山を登った先には、さらに楽しい登山ライフが待っている。