表情異なる自然の姿求めて―風景写真撮影がライフワーク・児野さん

木祖村薮原の児野(ちごの)幸通さん(81)は、木曽地方を中心とした風景写真の撮影がライフワークだ。定年退職を機に本格的に始め、現在も週に3日はカメラを手に出かける。公募展の入賞も励みにし、10日からは3回目の個展を開く。
10~16日、伊那市のかんてんぱぱホールで開く風景写真展「奥木曽の自然」は新作42点を展示。木祖村の桜や木曽町開田高原のソバ畑など四季折々の自然の表情を捉えた。中でも上松町の赤沢自然休養林で撮影したツツジ科でピンクのアカヤシオの写真が気に入っているという。
木曽の大自然に「撮影魂」を揺さぶられ、その感動を表現するため、「面白い構図」に挑むのが児野流。
作品「水すだれ」は、木曽町三岳の「不易の滝」で水が流れ落ちる岩壁の空洞に入り込み、滝の裏側から撮影。夜明け前に岩壁を登り、高さ1メートルほどの穴の中で身をかがめて朝日が昇る瞬間を狙った。
「自分ならではの被写体を探すのが大変でもあり楽しみでもある」と、面白さを話す。
塩尻市出身。県内の大手精密機器メーカーを退職後、兄が住んでいた木祖村に家を建てて移住。高校時代から興味があったカメラを手にした。
「会社以外の付き合いを増やすことと、高齢になっても続けられる趣味がほしかった」のが始めた理由で、NHK文化センター松本教室(現在は営業終了)の写真講座でも習った。
当初は軽い気持ちだったが続けるうちに夢中に。さまざまな写真展に出かけて作品の視点や構図を参考にし、「人と違う写真」を撮ることを心がけた。
古希(70歳)と喜寿(77歳)のお祝いの際、村内外で個展を開催するなど作品を発表。「10年計画で金賞を目指す」と、2014年から日本写真家連盟主催の公募展に応募。これまで銀賞を獲得するなど9年連続で入賞。今年はいよいよ、最後の挑戦の年となる。
また、21年間続けたNHK文化センターの写真講座の仲間たち8人で同好会を立ち上げて活動を開始。「長年、一緒に撮影会に行っていた気心の知れた仲間。これからも、お互いに刺激を受け合いたい」と、新たな楽しみに期待している。
妻の照子さん(82)は「夜間や早朝の撮影など、心配な時もあるけれど好きでやっていることなので。元気なうちは続けてほしい」と温かく見守っている。
今後は、主に地元の木祖村で撮影し、その作品展を開きたいという。「いつも見ている風景でも、たまたま違う風景を見せることがある。それを見つけられるかは、偶然と必然の出合い」。これからも自然と向き合い、自分だけに見せてくれる「最高のシーン」を探し続ける。