移住し農業に従事 日野さん、嶋田さん 奈川地区の活性化に若い力

畑に霜よけのシートをかける日野さん(左)と野沢菜の発芽の様子を見る嶋田さん

過疎進む山間地に希望

農業を通して松本市の奈川地区を活性化しようと活動するNPO法人「あぐり奈川」。人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が5割を超す山間地で、若者の雇用を増やすのを目的に設立された。その核になるのが、同市の農業法人「かまくらや」から出向する日野瑛介さん(24)と嶋田優平さん(23)。二人は「腰を据えて取り組もう」と同地区に移住した。

人と自然に魅力を感じる

農場主任を務める日野さんは箕輪町出身。高校生の頃は福祉の道へ進もうと考えていたが、祖父の家庭菜園で体験した収穫の達成感が忘れられず、進路を変更して県農業大学校(長野市)へ進み、かまくらやに入社した。
出向が決まり、「奈川ってどんなところ?」と不安を抱いて訪れたが、整備された畑に驚いた。第一印象は「地元の人が力を合わせ、頑張っている」。生活を始めた今は、朝起きて家を出ると目の前に山がそびえ、「空気がおいしく落ち着く」。地域の祭りにも参加し、「人も温かい。この地区が廃れてしまうのはもったいない」と力を込める。

地区のため一肌脱ぎたい

嶋田さんは大町市で生まれ、安曇野市で育った。やはり家庭菜園での収穫体験が、農業を志した原点だ。「農業は厳しい、難しいと承知しているが、あの達成感には代えがたい」と話す。
移住で心配だったのが、初めての1人暮らし。生活できるのか、仕事がうまくできるのか―。が、それは取り越し苦労だった。住民は移住してきた嶋田さんと日野さんを、温かく迎え入れてくれた。「地元のイベントに参加できたのが、本当にうれしかった」
奈川は、自然と人が上手に共生している場所と感じている。「手を入れず、山林に戻してしまうのはもったいない。地区の活性化のために一肌脱ぎたい」と覚悟を決めている。

【NPO法人あぐり奈川】
松本市や安曇野市の耕作放棄地でソバなどを育て、農地再生に取り組んできた農業法人「かまくらや」(松本市)の田中浩二会長(61)が奈川地区の住民らと4月に設立し、理事長を務める。住民でつくる会社「ふるさと奈川」の農業部門を引き継ぎ、農家から作業を請け負う畑も含めた38ヘクタールで野沢菜などを栽培するほか、新たにキャベツなどの高原野菜を特産品にすることを目指し、地域の学校給食への納入も視野に入れる。