夢追い滑り続け「氷上の道」30年 松本のプロフィギュアスケーター佐々木優衣さん

松本市の佐々木優衣(ゆい)さん(37)は、県内では珍しいプロのフィギュアスケーターとして活躍している。
スケートを始めて約30年。アマチュア選手時代は、全国レベルの競技会に出場はしたが、表彰台などとは無縁の選手。社会人になる際、教員になる道も選べたが、「フィギュアスケートの仕事がしたい」という自身の夢を追った。
現在は国内唯一のフィギュアスケートのアイスショー「プリンスアイスワールド」のチームの一員として活動。ジュニアの指導や振り付けのほか、最近は培った練習のノウハウを生かし、女性向けのパーソナルトレーニングも始めた。
「フィギュアが好き」の一心で自ら切り開いた「氷上の道」を、これからも滑り続ける。

「好き」で続けられる受け皿に

先月18日の松本市野溝公民館。プロフィギュアスケーターの佐々木優衣さんは、2022年から始めた女性向けのパーソナルトレーニングの指導をした。
この日は、「動きやすい体をつくる」をテーマにしたストレッチが中心。タオルを持って体側を伸ばしたり、あおむけに寝て、手でかかとを引き上げたり。
随所にフィギュアスケートで鍛えた柔軟性を見せながら、指導する相手には、美しく、健康な体をつくるために、このストレッチの有効性を分かりやすく伝えた。
現役時代に腰のけがで苦しんだ佐々木さん。「今だったら、こうしておけば予防できたという思いもある。経験を一般の人にも伝えたい」とし、「自分に自信が持てる体づくりをサポートできたら」と力を込める。

同市の芳川小学校低学年だった頃、当時近所にあったスケートリンクで開かれたフィギュアスケート教室に参加。その楽しさに夢中になった。小学4年から岡谷市のリンクを拠点にしたクラブチームに入り、本格的に競技に取り組んだ。
信明中学校3年時に全中大会、松本県ケ丘高校時代は3年連続でインターハイ、信州大時代は4年連続でインカレと、それぞれの年代で全国大会に出場。しかし、「入賞とか、ましてや表彰台とは無縁の選手」だった。
大学は教育学部で学び、教員免許も取得した。卒業が迫り、将来の進路を決める際、「教員かスケートかで悩んだ」という。両親や大学の恩師らには「今しかできないことだから」と、スケートを続けることを勧められた。何より、自身の幼い頃からの「フィギュアスケートの仕事がしたい」という夢を実現させたかったという。
2010年に「プリンスアイスワールド」のショーチームに入団。以降、全国各地で開かれるアイスショーに出演。チームの副キャプテンを務めたこともある。
幅広い年代の女性を中心としたファンが多いといい、「優衣ちゃんの優しいスケーティングが好き」などと書かれたファンレターが届く一方、いじわるな役柄を演じると「あの優衣ちゃんが」と、ギャップに驚くような感想も寄せられるという。
「フィギュアスケートは、それぞれのスケーターの個性が際立つ。特にプロは採点競技ではないので、強みを生かしたいろんな表現ができる」と、30年以上、滑り続けてきた魅力を語る。

現在はプロスケーターとしてアイスショー出演、パーソナルトレーニングの講師、フィギュアスケートの振り付けやジュニア指導と、「三足のわらじ」を履く佐々木さん。
県内では、このスポーツを続けやすい環境が整っていないことを憂えながら、「競技者として上を目指すだけじゃなく、『好き』というだけで続けられ、その受け皿になるのが私の課題」ときっぱり。氷上の表現者は、自身の将来を見据える。