【信大講座新聞をつくろう2025】松本市内に数多く存在 アートギャラリー

皆さんはアートギャラリーを訪れたことがあるだろうか。アートギャラリーとは、美術品やアート作品を展示、販売しているスペースのこと。アートに関心がある私たち4人は、松本市内にどんなギャラリーがあるのか興味を持ち、調べてみることにした。すると想像を超える数があることが分かった。どこも魅力的だが、その中から4店を紹介する。

自遊石

概念壊す石材店ならではの作品群

「市民芸術館西」信号から北へ約100メートルの大橋通り沿いにあるギャラリー「自遊石」(中央3)。「石材店でしか作れない作品を見せたい」と、オーナーの伊藤博敏さん(67)が制作したアート作品を中心に展示している。
伊藤さんは東京芸術大美術学部工芸科卒。伊藤石材店5代目で、家業の傍ら工芸作家として活動している。
作品のテーマは「ユーモアと毒」、モットーは「工芸品は暮らしの中に存在するオブジェだから、機能性を加えつつ、家の中に置けるサイズで作る」。金属と石など異素材のコラボレーションに魅力を感じるという。
「『石=硬くて冷たい』という概念を壊したい。物事を感覚で捉え、そこにストーリー性を見いだす“見立ての脳”は日本人ならでは。その感覚を大切にしたい」。作品に使う石は、仕事の加工工程で出る端材や拾った物などを使う。
作品はユーモアにあふれている。特に目を引くのは、石とファスナー、歯を組み合わせたアート。親戚の歯科技工士から譲り受けたという歯の模型はリアルだ。作り始めた頃はきれいな歯並びの物を使っていたが、近年は黄ばんだりゆがんだりした物でオリジナリティーを出しているという。作品「なめた奴(やつ)等(ら)」で歯の隙間から見える舌は、伊藤さんのファンから提供されたという。
日本人はもちろん外国人にも石の魅力を伝えようと各地で個展を行っている伊藤さん。「作品を見た時の素直な気持ちを大切に、自由に想像してほしい。石は遊べる素材だと伝えたい」という。
営業は午前9時~午後5時。不定休。TEL0263・32・5265

ギャラリーミヨサワ

地元作家の多彩な作品出合える場

中町通りの西寄りに位置する「Gallery Miyosawa(ギャラリーミヨサワ)」(中央2)は、松本市出身の型絵染作家・三代澤本寿(もとじゅ)さん(1909~2002年)の作品を紹介する常設ギャラリーだ。今年3月13日に開館5周年を迎え、温かみのあるアートを届け続けている。
場所はカレー店として使われていた古い土蔵の2階。現在は、びょうぶやパネルなど十数点を展示している。
型絵染とは、型紙を用いて布に模様を染める日本の伝統的な染色技法。ギャラリーを運営する「m.motoju会」代表の三代澤保水(やすみ)さん(78)によると、年に3回展示替えを行い、季節を感じられる色合いの作品を選んでいるという。
素材は紙だけでなく、紬(つむぎ)や木綿の布など多彩で、デザインも抽象的なものや親しみのある風景や動物などさまざまだ。ギャラリーには幅広い年代の観光客や外国人らも訪れ、「地元作家の作品を一度に見ることができる素晴らしい場所」と好評だ。中には気に入った作品を見るため、遠方から毎年来る人もいるという。
ポストカードや図録などのグッズも販売している。保水さんは「展示を通して地元の作家をもっと多くの人に知ってほしいし、アートに興味がない人も、ふらっと立ち寄ってもらえればうれしい。作品の奥深さや温もりを感じ、ほっとする時間を過ごしてもらえれば」という。
アートに詳しくない人も、眺めてみれば思わぬ発見があるかもしれない。
入館料200円。水曜定休。TEL0263・31・3317

蔵みーる・中町

歴史に溶け込む多様な文化発信地

中町通りのほぼ中央に位置する「蔵みーる・中町」(中央3)は、蔵を再生したレンタルギャラリー。陶器や着物などの工芸品、日本画などの個展や展示会などに利用されている。
運営する「萬藤」4代目会長の淺田州宏(くにひろ)さんによると、土蔵ができたのは1905(明治38)年。木綿糸や名入れタオルなどの繊維製品を販売していたという。その店舗部分だった1階71平方メートルを改装して99(平成11)年、貸しギャラリーとしてオープンした。名前の由来は、「中町をみる・蔵をみる・文化をみる」というコンセプトからだという。
取材に行った日は、30度を超える暑さだったが、室内はエアコンや扇風機をつけていないにもかかわらず空気が冷たく、過ごしやすかった。その理由を淺田さんに尋ねると、「外気温の影響を受けにくい厚い土壁と、温度を調整する漆喰(しっくい)のおかげ」という。
ギャラリーには、(フックでワイヤで絵をつる)ピクチャーレールや机、椅子などの設備が備わっている。利用者は工芸品の展示販売を中心に常連が多く、「工芸の五月」(毎年5月)に合わせて毎年九州から訪れる人もいる。予約は数カ月前がお勧めという。
淺田さんは、「街は50年のサイクルで変わっていく。若い人たちが、街が繁栄するための提案をしてくれたらうれしい」と話した。
洗練された静けさのある空間は、どこか落ち着くような、心のよりどころとして頼れそうな、ずっしりとした雰囲気をまとっていた。白壁の蔵は中町通りの歴史的景観に溶け込み、文化発信の場として地域に根差している。
営業は午前9時半~午後7時。水曜定休。TEL0263・32・0034

スーザンユニークマーケット

作家2人の個性あふれる作品展示

松本城から南西に徒歩約7分、「今町通り」沿いにある「Susan Unique Market(スーザンユニークマーケット)」(大手2)。シンプルな白い壁と、小窓からのぞく“ユニーク”な小物が目を引く外観だ。
店に入ると、カラフルな小物や雑誌、洋服などがずらり。刺しゅうやコラージュなどの作家として活動するONIO(オニオ)(老野菜美子)さんと、ぬいぐるみ作家のDOLLSSAN(ドールズサン)(那須野さつき)さんが、“ユニークな物”を集めて展示販売している。
オープンは2023年。洋服のセレクトショップだったこの店を、常連客だったONIOさんが縁あって引き継ぐことになり、DOLLSSANさんと共同経営することにした。DOLLSSANさんが制作する「KEBIN(ケビン)」は、陶器の花瓶を、ふわふわの毛で動物風に作ったぬいぐるみで包んだ作品。花器だけでなく、文房具入れなど用途は自由。どの作品もカラフル、個性的な形でかわいらしい。
ONIOさんは、主に洋服や古着、鞄、紙などに刺しゅうを施して販売している。思わず笑みがこぼれるようなデザインと色合いが特徴で、どれも思いが詰まった一点物だ。
店名には「他にはないユニークさを、お客さんに楽しんでほしい」という思いを込めたという。実際、作家の魅力があふれた個性的な作品が多く、それを目当てに来る人も多そうだ。
「松本は外国人観光客も多いので、お土産として面白い物を持ち帰ってほしい」とONIOさん。「(期間限定で出店する)ポップアップストアや受注会といったこともしたい」という。
営業は午前11時~午後6時。水・木曜定休。

【取材を終えて】

栗原くるみ(教育学部) ギャラリーのオーナーやアーティストなどの多様な考え方、価値観を知ることができ、とても貴重な体験となった。松本の魅力も知ることができてうれしく思う。読者に興味を持ってもらえる記事を書くのは難しかったが、非常に楽しい活動だった。ご協力してくださった皆さまや講座の講師に感謝申し上げる。
甲田菫(教育学部) 私たちは「アートギャラリー」について調べたが、松本市にたくさんのギャラリーがあることを知って驚いた。実際に取材をし、記事を書く作業は難しさもあったがとても楽しく、貴重な経験をすることができた。私たちの記事をきっかけにギャラリーに足を運ぶ人が増えたらうれしいと思う。
田和ゆきの(人文学部) 普段の生活で何かを取材することはあまり無いと思うので、実際に連絡を取ってお話を伺えたことはとても貴重な経験になった。記事の執筆は大変だったが、読んだ人がどのように感じるかを考えて書くのは楽しかった。今まで知らなかった松本市の魅力も知ることができた。
藤原心純(みあつ)(教育学部) 興味があることを探究することができる楽しさを取材を通して知ることができた。また、調べなければ知ることがなかったお店と出合えたことや、そんなお店を紹介することができたことをうれしく感じる。今回初めて記事を書いたが、限られた文章量で奇麗にまとめるのが難しく、改めて新聞を作る大変さを感じることができた。