[創商見聞] No.108 合同会社「プレシュアリー 」(横川 博一)

2×4材に音を込める

【よこかわ・ひろかず】41歳。大町市大町出身。東北芸術工科大デザイン工学部生産デザイン学科卒。2014年合同会社プレシュアリー創業、代表社員就任。

プレシュアリー

大町市大町5088−1 ☎050-3552-4830

―自動車好きから 
 大町市で生まれました。車好きだった父親の影響もあり、子どもの頃から自動車に興味がありました。池田工業高校を卒業し、自動車整備を学ぶ短大へ行きました。 その後、東北芸術工科大へ編入し、プロダクトデザインの勉強をしました。デッサン力などが未熟だったので、大学時代は苦労しました。卒業後、自動車関係の仕事に就きましたが、帰郷して個人事業を始めました。
―小口輸出入
 大学時代から起業したい思いはずっとありました。2014年に30歳になったのを機に、以前から興味があった個人輸出入業を始めたいと思い、合同会社を設立しました。輸出入について書かれた本やインターネットで勉強して、世界最大のオンラインマーケット「eBay(イーベイ)」に登録しました。
 グーグル翻訳を使って、小口でフィギュア(人形)や時計を輸出しました。アゼルバイジャン、サウジアラビア、イタリア、米国…。世界中へ届けました。サウジアラビアのユーザーに漫画「プラレス3四郎」の超合金フィギュアを爆買いされたことなどは印象的でした。
 良いことだけではなく大きなリスクも感じました。ごくまれにですが、買い手が、関税の関係などで受け取りを拒否する事態が発生しました。単に返品在庫が増えるだけでなく、クレジットカードで仕入れるため、後々の支払いでキャッシュを用意する必要があります。資金調整で大変な経験をしたこともあります。
 輸出が落ち着き始めた頃、自動車関連で中国からの輸入をスタートしましたが、とても大変でした。カー用品などの輸入で、最初は品質管理会社の仲介がなかったので、クオリティーコントロールにとても難儀しました。少しずつ勉強し、安定させました。


―ダイトーボイス
 ネット事業をやっていると、日本全国と取引できることは、大きな強みです。東京都板橋区にある「ダイトーボイス」社に出合いました。正確には、再会です。高校の卒業制作でボックススピーカーを作りました。その時、パーツにダイトーボイスのスピーカーを使ったのです。
 飛び込みでアポイントメントを取り、本社に出かけ、高校時代にお世話になったことや、手頃な価格帯なのに良質なスピーカーで素晴らしい、などと思いを伝えました。国内流通は確立しているようだが、海外販売の代理店として輸出事業をさせてほしいとお願いしました。
 同社は創業者が他界し、事業を縮小する方針でしたが、了承を得て15年4月から海外事業をスタートしました。やがて同社が閉業することとなり、残念に感じたので、事業承継ではないのですが、「ブランドをください」「商標をください」と打診。21年4月、正式に販売ライセンスを取得しました。そこからアマゾンなどで販売し、主流事業にしていきました。
 一般的なスピーカー部品類を5種類、約千個の在庫を持ち販売していました。同時に、中国で同じクオリティーの製品を生産できるOEM事業社を探しました。
 16㌢タイプ、㌢タイプなど、サイズ別にOEM事業社が生産し、販売を続けています。
―2×4材壁掛け型スピーカー
 販売は続けましたが、天つりスピーカーなどはどうも限定的で、一般受けしづらいと感じていました。いい音だけれど、もっと手頃な音響環境を提供できないだろうか。そう考えていた時、ネット販売などで2×4(ツーバイフォー)木材が売れることに注目しました。
 木口の厚さ2㌅、幅4㌅で大量生産できる、規格化された木材。DIYをはじめ、現在の日本建築で一番スタンダードな木材に音響環境を組み込めないか、と開発しました。
 厚み(奥行き)約4㌢×横幅9㌢×長さ118㌢と230㌢の2種。ブルートゥースアンプを内蔵。接続性とコンパクト性を両立させた薄型スピーカーを完成させました。
 現代の住宅は賃貸物件も多く、内装工事ができない場合もあります。壁を傷つけずに設置可能な構造と、前面投射型による明瞭な音質を両立させたスピーカーです。
 前面投射型は、音が直接耳に届き、明瞭度が高いので、映像との親和性も良好です。今回の開発で国内の特許申請をしました。
―大町商工会議所のサポート
 新製品を展開する事業は、長野県の「中小企業経営強化法に基づく経営革新計画」に申請、5月に承認されました。 
 大町商工会議所に相談に行って、いろいろ良くしてもらいました。専門家派遣事業に携わるコンサルタントと書類作成のサポートを受けました。県への取り次ぎもスムーズで、無事承認を得られました。
 国の補助金申請や県の制度資金などで、今後もメリットを多く活用できると思います。
―これから
 5月に新スピーカー開発に向けクラウドファンディングを行い、24件104万円を達成できました。目標金額の3倍以上でした。支援者に早く製品を提供し、年内には一般販売を始めたいです。
 輸入木材で開発しましたが、国内木材モデルも開発したい。県産ナラ材に可能性を感じています。また、ギター職人さんの塗装技術が優れているのでコラボできたらなど、ネクストアイデアも出つつあります。まずはしっかり国内売上を安定させた上で、海外マーケットに大きくチャレンジしていきたいです。  (聞き書き・田中信太郎)