【信大講座新聞をつくろう2025】 松本城の魅力に迫る

今春から松本での生活を始めた私たちは、この地の魅力を探るべく、一番の目玉である松本城に焦点を当てた。魅力発信の当事者たちに意図や手応えを聞こうと、ボランティアガイドと行政担当者を訪ねた。

〝湧き水〟の生活文化、〝外見〟が醸す雰囲気ーガイドボランティア2団体

松本城を無料で案内するボランティア団体は三つあり、そのうち2団体が専ら城を対象としている。
「松本城案内グループ」は日本語のガイドだ。相手は個人から団体までさまざま。説明する内容も希望に応じて自在に変え、30分から2時間のメニューを組み立てる。本丸と二の丸を中心に一緒に歩き、城郭の構造、特徴、さらには歴史についても説明する。齊藤孝資代表(83)によると、「楽しかった。また来たい」と言ってもらえることに力を入れているという。
ガイド11年目の齊藤さん自身は、松本城の魅力について、外見に加え、独特の立地も重要だと感じている。複合扇状地に立つ平城で、おかげでお堀の水はすべて湧水でまかなっているというのもアピールポイントだ。
湧水は、松本の生活文化でもある。江戸時代の水道技術などを話すと、観光客の反応もいいという。
アルプス善意通訳協会(ALSA)は外国語でガイドしている。織田吉夫常任委員(66)によると、外国人が松本城に期待しているものはやはり外見、そして、そこから醸し出される厳格な雰囲気だという。あまり詳細な解説は求められない。
「こちらから話すことを中心にするのではなく、相手のペースに乗りつつ臨機応変に対応する」と織田さん。何げない会話をしながら気楽に過ごすことに重点を置いている。そこにいることそのものが松本城の一番の魅力だと言えそうだ。

SNSで四季折々の「顔」PRー行政・市松本城管理課

行政として松本城の魅力を発信しているのは松本市松本城管理課だ。近年は、SNSのインスタグラムに力を入れている。投稿される写真には、四季折々の松本城の美しい「顔」が並ぶ。一般観光客が普段入れない場所から撮った景色もある。
人物を入れることはできるだけ避け、あくまで城をメインにすることにこだわっている。「松本城の一番の魅力は、お城の黒と白のコントラスト、それに北アルプスが加わった景観」と担当の根崎香穂さん。他の城郭のアカウントでは、イベント情報や豆知識を織り交ぜているところもあるが、見た目推しを貫く。「松本城にしかない魅力を幅広い世代に伝えていきたい」と話す。
伝える先には、外国も意識している。他国語で#(ハッシュタグ)を付けることは欠かさない。例えば、「#matsumotocastle」。そうすることで世界中の人の目に触れやすくなる。実際、投稿のコメントには、地元の人たちだけでなく、外国人からの声も届いている。
そのような魅力発信の戦略が当たっていることは数字が示す。アカウントのフォロワー数は4万3千で、国内城郭で最多だ。昨年5月に首位だった熊本城を抜き、1年で5割以上増えて、1万の差を付けた。
ネットでのつながりの一方、リアルなもてなしもおろそかにしない。ボランティアガイドとは日常的なやりとりはないが、専用ユニホームやシャツを提供し、詰め所を設置して活動をサポートしている。同課によると、ガイドになりたいという人は増加傾向で、松岡由香課長はその役割に今後も期待しているという。

【取材を終えて】

内川颯人(工学部) 誰かに取材をすることが初めての経験だった。質問をすることが取材かと思っていたが、知りたいことをどれだけ話してもらえるかが重要だと実感した。話したいと思わせるような質問や会話ができる必要があり、その奥の深さに驚愕(きょうがく)した。
佐藤慎太郎(工学部) 新聞記事を作るということと、そのための取材を初めて行った。3回の取材を通して事前に何を取材すればよい記事が書けるのか、限られた時間の中でどう立ち回ればよいのかを考えることが大切だと感じた。初めての経験が多く新鮮だった。
横井心(経法学部) 外側から見るだけではわからないような松本城の魅力を知り、これから松本城を見る際は意識しようと思った。また、取材する側を初めて経験し、改めて、聞く力や物事を多角的に捉える力が大切だと学んだ。
横山侑加(経法学部) 松本城について語る皆さん一人一人には「もっと知ってもらいたい、こんな魅力があるのだ」という強い気持ちがあるように感じた。その意志があるからこそ、地域の魅力を伝えることができるのではないかと学ぶことができた。